リーマン・ショックは機関投資家のポートフォリオ戦略を大きく狂わせた。伝統的資産だけでなく、分散効果の機能として期待されたオルタナティブ投資までもがリカップリング(再連動)し、その役割を果たせなかった。しかし今、オルタナティブ投資を見直す動きが広がってきている。投資対象や運用方法が多様化し、機関投資家の選択肢は増えている。
新たなショックが起きるとの予測もあるなか、果たして機関投資家はどのようにポートフォリオ戦略を考えるべきなのか。オルタナティブ投資をどう活用すべきか。関係者に話を聞いた。 (笠原崇寛)
流動性が高いものほど危機ではリスクになる
金融危機後、世界各国の度重なるマネー供給策、特に米国のQE2 (量的金融緩和第2弾)により、市場に過剰流動性が生まれ、新たなバブルとその崩壊が起きるのではないかと懸念する声もある。2007年サブプライム危機、2008年リーマン・ショック、2010年ギリシャ危機など、何度となくショックが起き、その度に株価が下落。今後、新たなショックがいつ起きてもおかしくはない状況において、機関投資家が何に投資すべきなのかは悩ましい問題だ。
リーマン・ショックで問題となったのは流動性が枯渇するリスクだ。しかし「流動性が高いものにもリスクがある」と、野村證券フィデューシャリー・サービス研究センターのフィデューシャリー・マネジメント部長、荻島誠治氏は語る。
「経済がノーマルな状況での流動性リスクとは、流通市場が発達しておらず、発行規模も少ないアセットクラス固有の流動性枯渇リスクのことを指す。しかし経済が危機的な状況の際には、逆に流動性が高いものがリスクになる。なぜなら危機に対応するため、世界中の投資家がすぐにキャッシュ化できる流動性が高いものから売っていくからだ。このため大型株などは危機の際に暴落リスクを抱え込んでいることになる」
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