国民の安定的な資産形成と顧客本位の業務運営について
我が国は過去35年間にわたって経常収支黒字を続けてきた資産大国であり、1800兆円を超える家計金融資産、200兆円の年金資産などが蓄積されている。人口の減少や高齢化の進展に直面する我が国にとっては、これらの蓄積された国民の富(金融資産)を安定的に増大させていくことが重要になる。
ところが、これまで個人の金融資産が有効に活用されてきたとは言い難い状況にあり、金融庁では国民の安定的な資産形成の実現に向けて、家計、金融機関、機関投資家に対し、さまざまな取り組みを行っている。
国民の安定的な資産形成を図るためには、金融商品の販売、助言、運用などに携わる全ての金融事業者が、インベストメント・チェーンにおけるそれぞれの役割を認識し、顧客本位の業務運営に努めることが重要になる。その観点から、2016年に金融審議会市場ワーキング・グループで、顧客本位の業務運営のあり方について議論がされた。この議論を経て、同年12月に公表された報告書では以下のような内容が示された。
- これまで、金融商品の分かりやすさの向上や、利益相反管理体制の整備といった目的で法令改正等が行われ、投資者保護のための取り組みが進められてきたが、一方で、これらが最低基準(ミニマム・スタンダード)となり、金融事業者による形式的・画一的な対応を助長してきた面も指摘できる。
- 本来、金融事業者が自ら主体的に創意工夫を発揮し、ベスト・プラクティスを目指して顧客本位の良質な金融商品・サービスの提供を競い合い、より良い取り組みを行う金融事業者が顧客から選ばれていくメカニズムの実現が望ましい。
- そのためには、従来型のルールベースでの対応のみを重ねるのではなく、プリンシプルベースのアプローチを用いるのが有効であると考えられる。具体的には、当局において顧客本位の業務運営に関する原則を策定し、金融事業者に受け入れを呼びかけ、金融事業者が原則を踏まえて何が顧客のためになるかを真剣に考え、横並びに陥ることなく、より良い金融商品・サービスの提供を競い合うよう促していくことが適当である。
この報告書の提言に基づいて、金融庁は2017年3月30日に「顧客本位の業務運営に関する原則」を策定し、公表した。
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