コロナ禍の影響で1年延期され、2021年10月31日から11月12日にイギリスのグラスゴーで開催されたCOP26(第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議)。COP26に対してグレタ・トゥンベリ氏は、中身のないおしゃべりと酷評し、明白な失敗と結論づけた。確かに、多くの国の目標は目標に過ぎず、空手形に見えなくはない。しかし、一方で、COP26の役割は一定程度果たした。COP26の意義はなんであったか。整理をしておきたい。
COP26の4つの成果
決まったこととして、四つ指摘する。
第一に、先進国については、それぞれの国がこれまで発表したNDC(2030年までの国別削減目標)について再確認したこと。新興国についても、カーボンニュートラルを達成する目標年を2060年とする中国は変わらずだったものの、インドが2070年と発表。中には2070年ではやる気がなさすぎるとの感想も出ているが、インドが目標年を設定したことは意義深い。やるやると言ってもどの程度やったかわからないのが普通だが、基準が出来ればそれより努力した、ということが明確に判断できるようになる。
また、先進国が目指す2050年カーボンニュートラルにタイやベトナムが歩調を合わせたことも大きい。
第二に、いくつかのイニシアチブの合意である。まず、メタンガス目標(グローバル・メタンガス・プレッジ)の設定ができた。2030年までに30%のメタンガスを削減する合意で、100カ国超が賛同した。二つ目は森林破壊対策の声明の合意で、110カ国が署名。三つ目はクリーンテクノロジー。クリーンテクノロジーの更新を推進するもので40カ国が署名した。
第三にGFANZ(グラスゴーネットゼロ金融同盟)が立ち上がったことである。これは銀行や運用会社など、450機関が2050年までのネットゼロにコミットしたもので、資産総額130兆ドルに達する。今後100兆ドル投じることも可能だという水準感だ。2030年までに必要な脱炭素投資額は、32兆ドルと言われるなか、世界の金融会社と伍して、かつ、日本にどれだけ資金を残し、また投下を誘発できるか、今後に期待したい。
第四に、終盤のサプライズとなった米中の協調による今後10年間の気候変動対策を強化する共同宣言が出されたことである。気候変動対策というともっぱら欧州ばかりで米中は後手に回っている印象があるが、その米中が協調することは実際、温室効果ガス排出量の削減を目指すうえで大きな意味がある。2020年代の温室効果ガス排出削減に関連した規制の枠組みと環境基準、グリーン設計といった循環経済に関連した主要分野、メタンの排出削減措置の強化、幅広い地域で効率的な電力の需給バランスを後押しする送電政策など、具体的項目に落として手を組んだ。
中国には恒大グループ等不動産の問題や共同富裕を目指すための政治的な駆け引きがあるし、米国はバイデン大統領の支持率が直近で38%とだだ下がり状態にあることから、仕組まれたショーかもしれない。しかし、それでもこの二大国が譲歩して協調したということは評価できる。
3つの残る課題
一方、決まらなかったこと(不十分なものも含む)は次の三つだ。
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