1957年の「主要短観」から始まった長い歴史を持つ日銀短観

宅森 昭吉
三井住友DSアセットマネジメント
理事 チーフエコノミスト
宅森 昭吉

2021年10月1日にマーケットが注目する重要国内経済指標である日銀短観の9月調査が発表される。

企業の景況感に関する調査は様々な機関で実施されているが、よく知られた調査の中で日銀短観は最も歴史のある調査である。1951年に日本興業銀行が、西独のIFO経済研究所の調査を参考に始めた「産業界の短期観測」を日本銀行が継承・改定した上で、1957年に「主要企業短期経済観測調査」(主要短観)を開始した。原則として、資本金1億円以上の上場企業(金融・保険業を除く)のうち、各業種の動向を概ね反映する主要企業524社を対象にしたものだった。

その時々の経済実態などを反映させる形で、調査対象企業や調査項目の見直しなどが行われてきた。1974年には、1960年から始まった製造業・中小企業のみを対象とした「中小短観」に、非製造業を加え、さらに大企業、中堅企業へと拡張した「全国企業短期経済観測調査」(全国短観)を開始した。2004年には「全国短観」の大幅な見直しが行われ、「主要短観」は廃止となった。

マーケットが最も注目するのが「業況判断DI」(ディフュージョン・インデックス)である。「良い」、「さほど良くない」、「悪い」という3つの選択肢の中から1つを回答してもらい、「良い」の回答社数構成比から「悪い」の構成比を引いて算出する。「良い」・「悪い」という水準で質問していて、「良くなる」・「悪くなる」という方向性を質問していない点が、他の調査と大きく異なる。

8月調査から悪化した9月調査QUICK短観、ロイター短観

QUICK短観、ロイター短観は、月次で企業の業況判断を調べている。質問も、方向性ではなく水準について調べている。日銀短観対象企業の一部に対する類似調査なので、日銀短観の予測に役立つ。通常、日銀短観は四半期調査なので間の月の調査によって次回のおおよその内容をいち早く推測することができる。

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なお今回9月調査のQUICK短観、ロイター短観は、7月・8月調査と大きく変わった。

QUICK短観9月調査の調査期間は9月1日から10日である。製造業の業況判断DIは6月調査のプラス26と同じプラス26となった。7月調査でプラス29になったが、新型コロナの変異ウイルス感染再拡大による行動制限の長期化が企業心理の重荷になり8月・9月と2カ月連続で低下となった。

一方、ロイター短観9月調査の調査期間は9月1日から9月10日である。9月調査400社ベースの製造業の業況判断DIは、6月調査のプラス22から4ポイント悪化しプラス18になった。8月調査のプラス33から比べると15ポイントの低下で2020年3月以来の大幅悪化だ。ロイター通信は「新型コロナウイルス変異株の感染急拡大や自動車の減産などが響き」と分析している。

大企業・製造業・業況判断DIはプラス14程度、非製造業DIは0程度を予測

9月のQUICK短観とロイター短観の数字の判断は、9月調査の日銀短観との調査期間の違いを考慮する必要があるかもしれない。全国の新型コロナウイルス新規感染者・過去最大は8月20日の25,868人だったが、2万人台は9月1日20,023人が最後である。この直後での調査では新型コロナウイルス感染者数増加、緊急事態宣言の延長などの悪影響を懸念する見方が多くて当然であろう。

なお、今回の日銀短観の回答期間は8月27日~9月30日で、多くの回答が集まる調査基準日は9月10日である。この頃になると、新規感染者数の減少、全人口の50%超がワクチン接種完了、新型コロナウイルスのワクチンを接種済みなら感染拡大が進行中の地域でも県境を越えた移動を可能とするなどの行動制限緩和案検討、日経平均株価3万円台などが意識された時期になる。9月調査日銀短観は、9月QUICK短観とロイター短観よりは若干明るい数字になる可能性がありそうだ。

9月調査日銀短観では、大企業・製造業の業況判断DIがプラス14程度と6月調査のプラス14と同程度の数字になると予測した。悪材料と好材料に対する見方が交錯し、景況感はもたつくとみた。

また、大企業・非製造業の業況判断DIは0程度と、こちらは6月調査のプラス1からマイナス1ポイント程度悪化するとみた。

なお、9月調査の大企業・製造業の業況判断DIが予測通りプラス14程度なら、6月調査の「先行き見通し」プラス13を1ポイント程度上回ることになる。事前の予想より景況感がわずかだが上振れたことになる。また大企業・非製造業が予測通り0程度なら、6月調査の「先行き見通し」プラス3を3ポイント程度下回る。非製造業では新型コロナウイルスの感染拡大が予想より酷く、前回調査時の先行き予想を下回ったということになろう。

【図表】(大企業)の業況判断DI比較

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(出所)(出所)日本銀行、トムソン・ロイター、QUICK