10~12月期も高めの成長となったが、月次ベースの経済活動は減速

角田 匠(信金中央金庫)
信金中央金庫
地域・中小企業研究所
上席主任研究員
角田 匠

2020年10~12月期の実質GDP(国民総生産)は前期比年率12.7%増と7~9月期(年率22.7%増)に続いて高い伸びを記録した。「Go To トラベル・イート」などの政策効果で個人消費の持ち直しが続いたほか、企業マインドの改善を受けて設備投資が3四半期ぶりにプラスに転じたためである。また、新型コロナウイルス感染拡大における世界的なIT(情報通信)化の加速を背景に電気機器を中心とした輸出の回復も続き、輸入を差し引いた外需は年率換算の実質成長率を4.3%押し上げた。

今回のGDP統計は、結果だけをみれば順調な景気回復を示す内容であったが、月次ベースでみた経済活動は2020年10月をピークに減速している。新型コロナウイルスの感染再拡大で「Go To トラベル」が2020年11月24日から段階的に停止され、宿泊旅行などサービス消費が減速しているほか、自動車生産の回復も一服しているためだ。2020年11月と12月の鉱工業生産と第3次産業活動指数は、ともに2か月連続で前月比マイナスと減少に転じている(図表)。

【図表】鉱工業生産指数と第3次産業活動指数の推移

【図表】鉱工業生産指数と第3次産業活動指数の推移
(出所)経済産業省

緊急事態宣言の再発令で再びマイナス成長に

11都府県に緊急事態宣言が発令された2021年1月以降、サービス消費を中心に経済活動は一段と落ち込んでいる。今回の緊急事態宣言は、2020年4月に発令された1回目に比べると活動が制限される範囲は狭く、2020年4~5月のような状況まで悪化しているわけではないが、2021年2月にかけて個人消費の下振れは避けられない。2021年1~3月のGDPは3四半期ぶりのマイナス成長となり、2020年度全体の経済成長率はマイナス5.1%と大きく落ち込む見通しである。

経済正常化の動きは維持されようが、2021年度も景気の下振れリスクは高い

2021年度の実質成長率は、大きく落ち込んだ2020年度の反動で3.3%のプラス成長に転じよう。IT関連を中心としたアジア向け輸出の拡大が続き、外需が成長率を1.0%ポイント押し上げると予測している。ただ、個人消費を中心とした内需の回復テンポは緩慢にとどまり、景気回復の実感も広がってこないとみられる。

2021年度の経済活動のカギを握るのがワクチン接種の動向といえるが、国内におけるワクチン接種に向けた準備は難航しており、年内に「集団免疫」を獲得できる可能性は大きく後退している。2021年度も新型コロナの感染一服と再拡大が繰り返されるとみられ、旅行や外食、娯楽などサービス関連を中心に消費の回復は遅れよう。

東京五輪については開催を前提としているが、その場合でも観客制限など様々な規制下での開催になるとみられ、経済的な効果は限られる。2021年度の実質個人消費は前年比3.0%増とプラスに転じるものの、2020年度の落ち込みの半分程度しか取り戻せないと予想している。新型コロナウイルスの感染が収束し、経済活動が正常化に向かうのは2022年度にずれ込む公算が大きい。