2021年10~12月期の実質成長率は年率6%前後の高成長に

角田 匠(信金中央金庫)
信金中央金庫
地域・中小企業研究所
上席主任研究員
角田 匠

2022年2月15日に公表される2021年10~12月期の実質成長率は、前期比年率6.0%と高めの成長率を予想している(2月10日執筆時点)。

筆者もフォーキャスターとして参加しているESPフォーキャスト調査の最新予想(2022年2月9日公表)をみても、同期のGDP(国内総生産)成長率は前期比年率で6.06%が見込まれている。緊急事態宣言の解除を受けて人々の外出行動が回復したほか、2021年夏の生産活動を押し下げた供給制約が緩和したためである。

人の移動の変化を指数化した「グーグル・コミュニティ・モビリティ・レポート」によると、小売店・娯楽施設への訪問者数のベースラインからの変化率は、新型コロナウイルス感染第5波に見舞われた2021年夏に大きく落ち込んだが、緊急事態宣言の解除後はマイナス幅が徐々に縮小し、2021年末にはコロナ前を上回るレベルまで回復した。

外出機会の増加で衣料品販売が持ち直したほか、低迷が続いていた旅行やレジャー、外食などサービス消費も2021年末にかけて急回復した。

【図表】小売店・娯楽施設への訪問者数のベースラインからの変化率と実質サービス消費指数の推移

図表
出所:グーグル・コミュニティ・モビリティ、日本銀行資料

感染再拡大の影響で2022年1~3月期の個人消費は大幅減の見通し

しかし、新型コロナの変異型(オミクロン型)の感染が広がり始めたことで、2022年明け以降人々の行動は再び慎重化している。小売店などへの訪問者数は第5波に見舞われた2021年夏の水準に逆戻りしており、同年末にかけて回復してきたサービス消費も大きく落ち込んでいるとみられる。

今回の感染第6波をもたらした「オミクロン型」は重症化率こそ低いものの、全国的に感染者数が急増していることが特徴である。

工場など生産現場の従業員にも感染が広がり、操業停止に追い込まれる工場も相次いでいる。特に、すそ野の広い自動車産業への影響は大きく、大手自動車メーカーは再び大幅な減産を余儀なくされている。

2022年1月からは、挽回生産を背景に自動車販売の大幅回復を見込んでいたが、回復のタイミングは2022年春以降にずれ込む公算が大きい。

2022年1~3月期の個人消費は、サービス消費の落ち込みと供給制約に起因する自動車販売の減少を主因に再びマイナスに転じる可能性が高い。

第6波収束後には潜在的な消費需要が顕在化する可能性も

もっともコロナ禍の制約が長期化していることで、潜在的な家計の消費需要は相当に高まっている。

実際、サービス消費の潜在需要の強さは、宿泊旅行統計調査から読み取れる。感染が沈静化していた2021年12月の日本人延べ宿泊者数は、「GO TO トラベル」の効果で持ち直していた2020年12月を上回っただけでなく、コロナ前の2019年12月比でも増加した。

潜在的な旅行需要の強さを確認する結果であり、感染が収束すれば、外食などを含めたサービス消費が大きく回復する可能性を示唆している。

日本より先に感染が拡大した米国や欧州では新規感染者数がすでにピークアウトしており、日本における感染第6波も2022年3月頃には収束に向かう可能性がある。

重症者数も抑えられていることから、感染収束が視野に入ってくれば、比較的早いタイミングで個人消費が上向いてくると予想している。