足元では、ESG(環境・社会・企業統治) 投資を巡る取り組みの中でSの部分、中でも働き方など人的資本をどう活用していくかに関する議論が活発化している。
従来は、経営戦略と人財戦略が同期化されていなかった(差別化戦略として認識されていなかった)、あるいは人的資本を資産としてではなく、コストとして認識(収益圧迫要因と認識)してきたことなどから、企業価値の中にうまく織り込むことができなかったが、ここにきて、人的資本の価値創造が長期的な価値創造の中核に位置するとの認識の高まりを受け、欧米では開示に関して、規制や積極的な取り組み等の動きが出ている。
価値創造の源泉としての人的資本
下表は、米国S&P500社の市場価値に占める有形資産と無形資産の構成割合の推移になる。従来は製造業が中心であったこともあり、設備等有形資産が重視されてきたが、この40年におけるIT化の進展やグローバリゼーションなどにより、ブランドや知的財産、人財価値といった無形資産、まさにESGを含む非財務情報が重視される世界に変化してきている。企業における真の価値の大部分を反映するのは、その企業のビジネスが持つ「可視化できない部分」すなわち、イノベーション、カルチャー、コーポレートガバナンス、人財などに関連する部分になってきているのである。
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