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為替 バイデン第一期の双子の赤字と政治のねじれが招くドル安進行
- 米国では財政赤字と消費回復により貿易赤字が拡大
- さらに中国による米国債売り越しがドル安を招来
- 大統領・議会のねじれによりドルはさらに下落
4月までは財政収支の悪化を家計貯蓄の増大が相殺
筆者の予想通り、ドル円相場は米大統領選を通じて113円17銭まで下押しした。バイデン氏の勝利によって、新財務長官候補ブレイナード氏のドル安志向に注目が集まったためである。新大統領の就任第一期は、米国の「双子の赤字」によるドル安の時代となる公算が高い。
2020年5月以降、米国のISバランス(貯蓄投資バランス)悪化と中国による米国債投資の売り越しによって、ドルは5月以降、米国の主要貿易相手国通貨に対して6.0%下落している。ISバランスの基本式「貯蓄-投資=貿易収支」は、「家計貯蓄(可処分所得-個人消費)+財政収支+企業収益-民間投資=貿易収支」(①式)と書き換えることができる。
2020年に入り、米国の財政収支は新型コロナウイルス禍の経済対策によって大幅に悪化し、1~9月期の累積赤字は前年比4倍の2.8兆ドルとなった。この結果、家計部門に流入した給付金は4月の可処分所得を前月比14.8%増加させた一方、個人消費が12.7%減少したため家計貯蓄は同3倍近く増大した。これにより、①式において財政収支の悪化と家計貯蓄の増大が相殺され、貿易収支の悪化は小幅にとどまった。
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