日米ともにコロナショック以前の水準に戻った株式市場

高田 創
岡三証券
グローバル・リサーチ・センター
理事長
高田 創

日米の株式市場は2020年2月のコロナショックで大きな影響を受ける前の水準を取り戻し、日本の株式市場は1990年代前半の水準にまで戻る状況だ。実体経済はどの指標で見てもコロナショックによるマイナスの影響を取り戻していないなか、株式市場がショック以前の水準まで値を戻したのは、金融緩和により運用資金圧力が高まったことに支えられている。

一方、以下の図表はREIT市場の動きを示している。2020年2月から3月にかけて急落した後、下落を取り戻しておらず、株式市場と比べて戻りは限定的だ。株式も不動産も同じ資産市場であり、資産運用上も金利水没下のリスクテイクのフロンティアとされながら株とREITに乖離があるのは、市場に歪みがあるとも考えられる。

【図表】東証REIT指数推移

東証REIT指数推移
(作成)岡三証券、日足、直近は11月6日

REITの分野ごとの乖離

コロナショックがサービス業を中心とした「コロナ7業種」(飲食、宿泊、陸運、小売、生活関連、娯楽、医療福祉)を中心に深刻な影響を及ぼす以上、当該業種に関連が深い宿泊や商業施設の賃料は、稼働率の低下を含めマイナス影響も生じうる。一方、宅配の拡大などによる物流施設については、需要の拡大から賃料の上昇期待も生じている。REITのなかでも、物流に関しては昨今のコロナショック後のEC需要でニーズが高い。住宅はコロナショックでも比較的安定した分野である。また、オフィスは郊外への分散などの傾向があるものの、既存のオフィス需要への不安は根強い。

REITにディスカウント圧力が加わるが……

REIT市場のバリュエーションを振り返ると、実物不動産市場の回復の割にREIT市場が戻っていない可能性もある。コロナショック前は、実物不動産対比でREIT市場はプラスのプレミアムの状況にあったが、コロナショック後はマイナスに転じた。REITに関する不確実性がディスカウント状況をもたらしたからだ。REITは従来、「インカム商品」として位置付けられていたがために、コロナショックに伴う賃料の低下不安に対して過度に反応した面もあるのではないか。

投資家の資金がREITに戻っていない状況の背景には、REITの保有者構造に偏りがあったこともあるだろう。地域金融機関が大口の保有者となり、今年2・3月の決算前に大幅な処分売りが生じ、いったん大幅な損失を被った金融機関も多かっただけに、そうした投資家層が再び参入するまでにはある程度時間を要する可能性がある。

ただし、本来、REITの投資家が長期にわたって安定的な収益を確保することを念頭においたポートフォリオを構築しているとすれば、再び、インカムの安定からREIT市場に復帰することが期待され、生じているディスカウントが次第に正常化されると展望される。以上の見方の背景には金利水没のなかでのインカムニーズが根強いことがある。

債券がキャピタル商品に、株・REITが新たなインカム商品に

「金利水没」環境下、債券はマイナス金利でも配当はマイナスにならないなか、配当の重要性は相対的に高まりやすい。株式はインカムを重視して投資する考えが投資家の間に広まり、株式が新たなインカム商品として意識されてきた。同様に、賃料はマイナスにならないなか、不動産投資への投資が重視され、REITへの投資が着実なインカム商品として意識されやすい。さらに、コロナショックで金利の水没領域も広がり、株式やREITにインカムへの期待も再び強まりやすい。安定配当の株式、安定賃料の不動産も新たなインカム商品の位置づけとなる。

事実上の不動産市場への公的資金注入

REITを巡る環境として特に認識すべき点がある。それは、コロナショックは株・不動産に対しかつてなく優しい状態にある点だ。今年、政府が二次補正予算で対応した家賃支援給付金は、事実上の不動産市場への公的資金の注入に等しい。割引現在価値(ディスカウントキャッシュフロー)で不動産評価を行うに際し、賃料の負担力が増すことは価格保全に資するからだ。

同時に日本銀行は株式市場を支援すべくETF買い取りを倍増し、不動産市場を支援すべくREIT買い取りの倍増を決定し株式・不動産市場で資産価格を支援する対応を政府・日銀が行っている。REIT市場はコロナショックに伴い大きな影響を受けたが、時間をかけつつもインカム確保を重視した安定商品としての評価を回復すると展望される。

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