• 米国では、大統領と上院のねじれが政策停滞を招く可能性。
  • ヘッジファンドが菅政権の円高抵抗力を試すかもしれない。
  • 中国による日本国債買い急増は円高のサイン。
  • インドネシアはトルコと同じ轍を踏む可能性。

米大統領選の“ねじれ”でドル安の可能性も

梅本徹
J-MONEY論説委員
梅本 徹

来る11月3日、米大統領選挙の投開票が実施される。前回の2016年選挙では、クリントン元国長官優勢との大方の予想に反し、現トランプ大統領が勝利し、ドル円にとっては、104円台から118円台まで14%近いポジティブ・サプライズとなった。

洋の東西を問わず選挙は水物といわれる中、太平洋の反対側の選挙予想をもとに為替を張るのは無謀とわかりながらも、二匹目の泥鰌(どじょう)を狙ってみよう。米CNNは、直近の世論調査の集計で、53%対42%でバイデン氏の優勢を伝えている。一方、連邦議会選挙では、下院の民主党優位が揺るぎない。しかし、上院は民主・共和が拮抗している。トランプ氏が逆転勝利する中、共和党が上院の過半数を維持しても、現状維持で大きなサプライズはない。しかし、トランプ氏再選の中で民主党が上下院を制するか、あるいはバイデン氏勝利でも共和党が上院の過半数を維持すれば、いわゆるねじれが生じて、景気浮揚策が停滞する可能性が高くなる。ドル円にとってネガティブ・サプライズである。

現政権との類似性が指摘される共和党レーガン政権の第二期(1985~88年)では、中間選挙で民主党が上院をも制して、大幅な円高が進行した前例もある。また、今回、大統領・上下院のすべてが民主党となれば、同党伝統の保護主義・ドル安政策が復活するかもしれない。

中国が日本国債の買いを急増させる

日本の政治に目を向ければ、安倍政権は、歴史上、稀有なまでに円安にコミットしてきた(詳しくは、本誌10月号掲載の拙稿をご参照)。米大統領選挙の結果がドル円にとってネガティブであれば、ヘッジファンドが、菅新政権の円高抵抗力の程を試してくる可能性がある。10月6日付け日本経済新聞朝刊は、「中国による日本国債買い急増」と報じた。8月の中国による対内中長期債投資(ネット)も8502億円と、先月(7239億円)をさらに上回った。また季節変動を除いても4月以降の増加傾向が確認される。

さらに興味深いのは、2015年以降のドル円と中国の対内中期債投資の強いコリレーションである(図表)。これは、中国の外貨準備を管理するSAFE(国家外貨管理局)が、非常にアクティブで、しかも、市場支配力のある為替投資家であるためであろう。中国による日本国債買い急増は、ドル円のダウンサイド・リスクを示唆しているのかもしれない。米大統領選に向けて、ローデルタでのドルプット購入のような慎重なドルショートの構築が望まれる。

【図表】ドル/円と中国の対内中期債投資

ドル/円と中国の対内中期債投資
出所:財務省・日銀、Fed(米連邦準備制度)

インドネシア・ルピアは下値を試す展開か

3か月前の本稿で推奨したインドネシア・ルピア売りはワークしている。6月以降ドルは同通貨に対して最大7%以上上昇した。国債を直接引き受けているインドネシア中銀の行動が多大なリスクをはらんでいることはすでに述べた。同国では、景気後退とコロナ禍の拡大に加え、9月に入り中銀の独立性を一層毀損する法改正が表面化した。10月には雇用制度の法改正(オムニバス法)に対するデモが全土に広がり、ジャカルタでは一部が暴徒化している。外為市場では、今年に入りすでに国債引き受けを導入したトルコのリラが急落しているが、インドネシア・ルピアのさらなるダウンサイド・リスクにも注意する必要がある。

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