グローバル投資による多様性

西村章
ラサール不動産投資顧問
執行役員 クライアント キャピタル グループ
西村 章

グローバルREIT(不動産投資信託)投資の特性の1つは、多様性がもたらす分散効果だ。各国のREIT市場動向は一様ではなく、REIT市場は実に多様な不動産セクターで構成される。セルタワー、データセンターなどのセクターは、REITを通じた投資は容易だが、実物不動産で投資することは難しい。さらにREITが保有するコア不動産の最大の特性は、賃料に裏付けられた安定的なインカム収入だ。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、グローバルREIT投資の多様性とインカム収入の重要性を改めて認識させた。

2020年のリスクは米国大統領選挙や米中貿易摩擦だと考えられていた。2月まで米国の雇用市場は好調であり、急激な景気後退の予兆はなかった。そんな中、金融危機時のブラックスワンが世界的なパンデミック(大流行)の発生として市場に舞い降りた。ブラックスワンは滅多に起こらない不確実性であり、投資家は予測と計量が困難な不確実性に十分に備えることはできなかった。

図表は過去に世界で起きた金融危機以降のREIT市場の下落局面を、リターンと経過営業日数で示したものだ。今回の危機でREIT市場は、2月20日前後までは高値圏で推移した。COVID-19も中東呼吸器症候群(MERS)のような中国域内の疫病とし
て楽観視されていたが、感染が欧米に飛び火し、都市封鎖、外出禁止・自粛といった社会的隔離政策によって経済活動が突然に停止・停滞した。そして社会的隔離政策は、不動産・REIT市場に大きな影響を与えた。不動産は人が使う場所だからだ。

過去の下落局面との比較

バリュエーションが各国とも割安

投資においては、確実性の高いものを見つけ、少しでも不確実性に対処することが重要だ。グローバルREIT投資を通じた分散投資は、今回の危機においても有効であった。

商業施設セクターへの影響は深刻で、テナントからの賃料猶予や減免要請も生じている。ただし、スーパーマーケットや薬局など、生活必需品を扱うテナントが入居する物件は比較的堅調だ。また、ホテルセクターにも大打撃を与えている。一方で、eコマース拡大の恩恵が続く物流施設や、急速なモバイルデータ需要の増加が追い風となるデータセンターやセルタワーなどへの影響は限定的だ。こうした不動産セクターの多様性は分散投資効果をもたらすものだ。

不動産のインカム収入も確実性が高い。今でも商業施設やホテルを除けば賃料支払いは堅調だ。他方、世界的な過剰流動性によって低金利は継続するだろう。実はCOVID-19発生前から、利回りを求める資金が過去最大規模で不動産市場に流入していた。不動産インカム収入の中断が一時的であると判断され、予見性が高まれば、インカム収入を求める資金は不動産・REIT投資に戻るだろう。3月下旬にかけて大きく下落したグローバルREIT市場で、反発の動きがみられるのもそのためだ。

REITが保有する不動産時価と比べた株価指標である純資産価値でみると、価格面でも、5月末時点で各国とも割安圏だ。過去に純資産価値が大幅ディスカウントとなった局面を振り返ると、いずれも保有不動産収益の予見性が高まるにつれて、割安感が解消されている。REITの適切な銘柄選定が大切だが、長期的な視点の投資家にとっては投資の好機と言ってよい。

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