運営状況に連動する変動賃料

みずほ証券 
エクイティ調査部
シニアアナリスト
大畠 陽介

2019年は世界的な金利低下を追い風に、REIT(不動産投資信託)は良好なパフォーマンスを残した。2018年は割安感を背景に海外投資家が主な買い手だったのに対して、2019年は海外投資家に代わって、地銀などの国内金融機関が利回り追求を目的に積極的にREITに投資した。2020年に入り、新型コロナウイルスの感染拡大によって資本市場が世界的に混乱しており、REITは株式とともに調整色を強めている。

新型コロナ問題は短期的に収束する可能性は低く、2020年前半は新型コロナ問題の直接的な影響によって市場のリスク許容度が低下した環境が続くだろう。REITの値動きも当面ボラタイルに推移すると考えられ、高い配当利回りが大きな魅力であるREITにとっては厳しい環境となる。

REITは収益の大半を賃貸収益に依存しており、収益構造は非常に安定している。新型コロナ問題で短期的に収益に影響がある資産タイプはホテルだけである。ホテルREITの場合は収入の3~4割が運営状況に連動する変動賃料であり、客室稼働率や宿泊単価が下落すれば賃料減少に直結する。新型コロナ感染の収束が見えてくるまでは、収益回復は期待薄である。また、オリンピックの中止あるいは延期の可能性も浮上しており、この点もホテルREITには重しとなろう。

注1:みずほ証券カバレッジの計38社が対象
注2:2020年度みずほ証券予想に基づき、3月5日の終値を用いて算出
出所:みずほ証券エクイティ調査部作成

NAV倍率は資産タイプで二極化

新型コロナ問題による経済活動の停滞は、実体経済に大きな下押し圧力となろう。また当然不動産市場へも循環的な調整要因として働くだろう。ただし、資産タイプ別に見た場合、影響度合いは異なってくる。循環的要因と構造的要因をセットで考えることが必要となるだろう。循環的要因としては全ての資産タイプに対してネガティブに作用する一方で、構造的な追い風がある資産タイプではダウンサイドリスクは軽減される。

住宅は限定的な供給の中で若年層の都心流入が加速したため、近年は賃料上昇傾向が強まった。これに加えて、新型コロナ対応で在宅勤務が広く活用されつつある。景気減速によるマイナス影響はあるものの、相対的にはダウンサイドリスクは限定的だろう。物流施設に対しても同様に循環的な下押し圧力は働くものの、EC(電子商取引)化というポジティブな構造要因がファンダメンタルズを下支えするだろう。

他方、オフィスと商業施設にはより慎重な見方が必要だろう。オフィスでは賃料増額改定による内部成長が続いてきた。しかしながら、新型コロナによって今後の景況感や企業業績には不透明感がかなり強まっている。今後は市場賃料の上昇ペースは鈍化に向かい、テナント側では賃料増額改定を受け入れる余地が小さくなるだろう。商業施設では2019年10月の消費増税に加えて新型コロナによるさらなる売上低迷で、都心エリアで続いてきた賃料上昇トレンドも、鈍化は不可避と考えられる。

実体経済や不動産市場の不透明感の高まりによって、REITの株価にも大きな歪(ゆが)みが生じている。足元では投資家の選好が極端にクオリティ重視に傾いているため、経営の安定性や株式流動性の面で優れる大規模銘柄が選好されている。また資産タイプ別では、短期的に収益リスクが小さい物流施設やオフィスが強く選好されている一方、ホテルや商業施設は新型コロナ問題の直接的な影響が嫌気されて大きく売られている。

結果として資産タイプ別のNAV(純資産価値)倍率は大きく二極化している。今後はいずれかのタイミングで修正に向かうと考えられ、投資機会となるだろう。中長期的な観点では、オリンピックや新型コロナ問題の影響が剥落(はくらく)した後の、安定化した状態を見据えて投資を行うことが重要となろう。

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