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為替 激動の市況に手をこまねく金融当局。6年間のドル一強時代に幕引きか
割に合わないFBRの緊急利下げ
2020年の経済・金融市場は新型コロナウイルスの感染拡大によって激動の幕開けとなっている。同年3月3日のFRB(米連邦準備理事会)による緊急利下げだった。定例会合を2週間後に控えたFRBは急遽、臨時会合を開催、FF(フェデラル・ファンド)金利誘導目標を50bp(ベーシスポイント)切り下げた。1回0.25% pt換算で7枚(1.75%pt)の利下げカードがあったところ、一気に2枚を切ったことになる。しかも驚くべきは同年3月16日にも定例会合を前倒しして今度は1.00%ptの利下げを敢行、一気にゼロ金利に引き戻された。
しかし、これらの政策対応は不要不急だったと言わざるを得ない。利下げで未知の疫病を治癒も根絶もできず、サプライチェーンの寸断も復元できない以上、中央銀行(金融政策)に期待された役割は「時間稼ぎ」しかない。にもかかわらず、会合日程をいじってまで全ての利下げ余地を使い果たしてしまったことは正直、割に合わない。これから稼がなければならない「時間」をなぜ焦って捨てたのか。政治的圧力に配慮した可能性を邪推してしまう。
それでも、その大幅利下げを有効に使えればまだ良かったが、かえって現状の深刻さがクローズアップされた。一連の対応を経てFRB自身の政策余地が失われたことを全面的に喧(けん)伝してしまったようなものだ。これは非常に痛い展開である。
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