金融政策の変更や地政学的なリスクなど、様々な不確実性が燻る2024年。年金基金はどのように安定的なポートフォリオを構築すればよいだろうか。運用コンサルおよび年金資産運用の最前線に立つ2名の話を基に探る。
数値上の相関係数だけでなく質的に見て分散計画を立てる
「インフレ動向や金融政策の不確実性、そして地政学的なリスクなどは、いずれも2023年から意識されてきたテーマ。特に長期投資家である年金基金は、何か大きな路線変更を検討するのではなく、王道に立ち返る運用をさらに強化すべきだろう」
タワーズワトソン・インベストメント・サービスコンサルティング部長の木村倫啓氏は、2024年の運用環境が非常に展望を持ちづらい点に触れつつ、こう話す。木村氏の語る「運用の王道」とは、簡潔に言えば①自らの基金のリスク許容度を確認した上で取れるリスクを取る、②分散投資の徹底の2点だ。ただ、現状の高い不確実性がチャンスをもたらすことも事実と述べ、アルファ収益機会への注目も第3のポイントであると説明する(図表)。
「機動的な運用でアルファ収益機会を捉えられるのが理想だが、年金基金にはリソースの限界がある。アクティブファンドなどを通じて優秀な運用者のスキルの活用を重視したい」
もちろん、市場の方向感が見えづらい中で安定運用の土台となるのは②で触れた「分散投資の徹底だ。「分散投資は、もう何度も言われていることではあるが、やはり投資先の収益源泉、つまりリターンの源となるリスク要素が何かをきちんと把握し、そのリスク要素を分散するという基本を徹底することが何より重要。数字だけ見て相関係数が低いからと分散を判断するのではなく、リスク源泉が分散できているかどうか、質的な面をきちんと見て分散が図れているか確認したい」。木村氏はこのように分散投資の原則への再注目を促す。
なお分散投資に欠かせないのがオルタナティブ資産だが、オルタナティブ資産は一時期のように「何でも上がる」状況ではなくなっている。木村氏は例えば、インフレ環境で注目度が高まっていたリアルアセット戦略については、「ポートフォリオで重要な役割を果たす資産であることは間違いないが、インカムリターンの源泉として伝統的な債券の妙味が拡大している中では、全体として投資妙味が大きいと言える環境ではなくなっている」と注意を促す。
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