恵まれた運用環境をけん引してきた株式と債券の魅力が薄れている。市場のベータ(マーケットと同等の収益)にとらわれず、アルファ(超過収益)に着目した運用を志向するなど、機関投資家も運用戦略の見直しに動いている。米国利上げ後の機関投資家の運用トレンドを探る。
金利上昇より株式の下落に警戒
2015年12月16日、FRB(米連邦準備理事会)がついに異例の金融政策に終止符を打ち、10年ぶりに政策金利を引き上げた。米国の金融政策の正常化から半月以上経ったが、いまのところ急激な金利上昇などは見られない。
インベスコ・アセット・マネジメントの外国株式部長の岸本伸一氏は、イエレンFRB議長の発言を踏まえて、「米国の利上げは緩やかなペースとなる公算が高い。今後も債券のキャピタルロスを招く金利上昇を過度に恐れる必要はないだろう」と分析する。
タワーズワトソン・インベストメント・サービス代表取締役社長 兼 コンサルティング部長の五藤智也氏は債券より株式の下落を警戒する。債券のキャピタルロスはインカムゲインで多少緩和できるが、株式はリーマン・ショックのような危機にひとたび見舞われると、短期間でも50%下落する場合があるからだ。
株式市場の先行きも危ぶむ。タワーズワトソンは5年程度の市場見通しとして「低成長」「ダウンサイド・イベント」「高成長」の3つのシナリオを挙げる。このうち確率50%を見込む「低成長」では、株式、債券のリターンはともに期待できず、確率35%の「ダウンサイド・イベント」では株式が30~50%程度下落する可能性があると予測する。
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