2015年4月15日、ニューバーガー・バーマンは「今後の債券市場見通しとマルチ・インカム戦略の有効性」と題した機関投資家対象のスモールミーティングを開催した。

セミナー
セミナー後半では、債券市場の見通しと「マルチ・インカム戦略」のポイントが解説された

ミーティングではまず、元金融庁長官であり、現在はニューバーガー・バーマンの最高顧問を務める五味廣文氏が「今後の金融機関の運用について」をテーマに講演を行った。経済構造が変化しているなかでは、かつて妥当だった規制や収益性の高い分野、効率的なリスクも変わっていくため、金融機関には「エクイティ資産の活用」や「リスク管理能力の刷新」が求められる。

こうした実態を踏まえて五味氏は、地方をはじめ人口の減少が著しい現在、「営業基盤の縮小は避けられず、地方経済からの一定の収益を前提とした経営の考え方は通用しにくくなっている。従来のままでは、地方と一緒に金融機関も衰退しかねない」と言及。金融機関には運用の見直しとともに、統合・合併・再編なども加味した「戦略的な経営への取り組みが必須となる」と語った。

2014年9月に発表された「金融モニタリング基本方針」(金融庁による金融機関に対する監督・検査の基本方針)について、五味氏は「金融当局の視点が不良債権処理から将来の収益に移った」と指摘する。金融機関には、企業とともに成長できるような長期のビジネスモデルと、それを維持するための事業性を向上させる貸し出しが求められ、資産運用に携わる関係者には運用の高度化が求められるようになったという。

続いて、ニューバーガー・バーマングループのマルチ・インカム戦略の運用責任者であるトム・マーサラー氏が、米国、欧州、日本の経済・金融環境の見通しを解説した。米国の実質GDP(国内総生産)成長率は2.5‐3%のプラス、金利については2015年9月以降に利上げが開始するとの予想を示した。

欧州のGDP成長率は市場予想を上回ると見ており、2016年からはマクロ経済の回復を後押しに金利が再び上昇傾向になる可能性があるとした。日本の金利についても欧州同様、マクロ経済が持ち直すなかで、上昇可能性があると見ている。マーサラー氏は、世界の金利環境と債券セクター別のスプレッド(金利差)の推移を比較し「金利をはじめ、債券市場の変動性が高まっていくと見ており、柔軟な運用手法を用いることで市場に存在するミスプライスから収益機会を獲得できると考えている」と話した。

市場で放置されているミスプライスから収益機会を捉える方法として、同社が提案する戦略の1つが『マルチ・インカム戦略』だ。 同戦略は投資対象に制限を設けずに各国の国債や社債、エマージング債券、ハイイールド債券などに幅広く投資し、機動的な資産配分調整を特徴とする「アンコンストレインド型」の債券運用戦略である。2003年に設定され、約12年の運用実績があり、2003‐2014年の年度別リターンを見ると、いずれの年度でもプラスのリターンを確保している。

「当社はマクロ視点のみで投資判断を行うアプローチではなく、債券セクター間の徹底した相対比較(レラティブ・バリュー)にフォーカスし、市場のミスプライスに着目してポートフォリオ構築を行っている。各債券セクター担当者による独自のシナリオ分析を基に算出される今後12カ月の将来的なリスク・リターンをベースにポートフォリオを構築し、機動的に資産配分を調整する」(マーサラー氏)

個別の債券セクターの見通しについては、特に短期のデュレーション特性に対して割安と見る「非政府系MBS」に対して強気の姿勢だ。加えてスプレッドセクターについては、足元の原油価格低下によって全体的に割安感が広がっている「エマージング債券」に対して強気の見通しを示した。一方で、米国金利については慎重な見方をしており「ポートフォリオのインカムを重視しつつ、デュレーション(金利リスク)に対しては、一定程度のヘッジを行うポジションを維持する方針だ」とマーサラー氏は説明した。