ニューバーガー・バーマンは2015年7月16日に「ニューバーガー・バーマン2015年サマー・コンファレンス」を開催し、同社が注目する投資対象の概要と特徴を解説した。

コンファレンス
このほかコンファレンスではMLP市場、金利・クレジット市場の見通しが解説され、質疑応答は活発なものとなった。

ニューバーガー・バーマンが運用対象として有望視しているのが「米国地方債」と「コーポレート・ハイブリッド証券」だ。

米国地方債は、地方財政運営、インフラ整備事業などを目的として米国の州や市から発行されており、米国投資適格社債よりも格付けは高い傾向にある。相対的にデフォルト率が低く、景気の悪化や回復などの市場変化に伴う信用サイクルの動きに影響を受けにくいという特性から、比較的安定性の高い資産とみなされており、米国の個人投資家を中心として長期で保有されることが多いのが特徴だ。

米国地方債市場は100年以上の歴史を有しており、発行体数が4万6000、市場規模は約440兆円となっている(2015年5月末時点)。ニューバーガー・バーマン・グループ米国地方債戦略運用責任者のジェームス・イスリン氏は「近年では、より財源を確保しやすい上下水道や公立住宅・病院の整備などのために発行されるレベニュー債のシェアが拡大している。他方で、新規発行量自体は減少傾向にあり、需給の改善傾向が続いている。そうしたなかで、足元における米国地方債のバリュエーションは割安な水準にある」と語る。

今後は、米国の利上げとともに米国地方債はどのような値動きを見せるのか。イスリン氏は前回の利上げが行われた2004~2006年を例に挙げ、「ゆるやかな利上げが想定される局面においては、米国地方債は相対的に安定したリターンを提供していくだろう」と予想する。加えて、米国地方債は入札方式ではなくネゴシエーション方式によって取引が行われる。そのため、発行体との交渉を通じて満期までの期間やクーポン率などを投資家の望ましい水準に設定するなど、相対的に高い利回りを求めることが可能となる。

「元本の保全を目的とした投資において、米国地方債は米国債や米国投資適格社債を補完する投資対象となり、今後も利回りを追求できる」(イスリン氏)

ニューバーガー・バーマン債券運用部の鈴木康之氏が「比較的新しいものの、投資タイミングとして最も興味深いアセットクラスの一つ」と評価するのが「コーポレート・ハイブリッド証券」だ。コーポレート・ハイブリッド証券は、非金融機関の事業会社が発行する劣後債・優先証券などを指し、公益セクターの割合が高いのが特徴だ。

ファンダメンタルズの改善が期待される欧州経済の中でも、とくに安定性の高い公益セクター企業が主な投資対象となっており、相対的に市場の動きに左右されにくい。近年、格付け機関によって発行額面の一部の資本算入を認めるルールが整備されたため、2013年以降にコーポレート・ハイブリッド証券の市場は急速に拡大した。2013年時点で約3兆円だった発行額は、現在では約15兆円にまで増加している。

金融機関が発行するハイブリッド証券と同様に、弁済順位が普通社債に比べて劣後するといった固有のリスクがあることから、利回りが相対的に高いという特性がある。「足元では、金融ハイブリッド証券と比較してコーポレート・ハイブリッド証券の方がバリュエーション上の魅力度が高く、より高い投資効率を期待できる」と鈴木氏は語る。併せて、多くがユーロ建てで発行されているため、米ドル建て債券に対する中長期的な為替ヘッジコストの低減効果も期待される。

コーポレート・ハイブリッド証券には、利払い繰延リスクがあるものの、発行体が利払いを繰り延べた場合、クーポンが累積され、次回に繰り越されて支払われるという特性がある。また、通常5~10年目に初回コール日が設定されることが多いが、発行体によって償還が延長されると同証券が格付け機関から資本としてみなされなくなることが一般的であり、初回コール日での償還の蓋然性が相対的に高いなど他の債券にない特徴を持つ。

鈴木氏は「まだ新しいアセットクラスであることから、現在、コーポレート・ハイブリッド証券は発行体のクレジット・ファンダメンタルズ対比で割安な水準にある。円で投資している投資家にとっても、ユーロ建て債券がメインとなっている本アセットクラスに投資することで、米国利上げに伴う米国債券市場の金利上昇による懸念を回避しつつ、為替ヘッジコストの低減を期待できる」と強調する。