インベスコ・アセット・マネジメントは2015年5月20日、機関投資家を対象に「ベンチマークにとらわれない資産運用」セミナーを開催した。転機を迎えた債券や株式の市場分析とともに、先行きが見通しにくい市場環境における「アンコンストレインド」運用の有用性をアピールした。

ルイス・オーブリー・ジョンソン氏
インベスコ・パーペチュアル
債券 プロダクト・ディレクター
ルイス・オーブリー・ジョンソン氏

セミナーは基調講演と3つのセッションで構成。このうち「下振れ局面に備えた債券運用」では、インベスコ・パーペチュアルの債券 プロダクト・ディレクターのルイス・オーブリー・ジョンソン氏が、「金融危機以降、マクロ経済の景気回復の足取りは重い。日本と欧州のGDPはいまだに2008年水準に達していない。多くの先進国の物価は低レベルにとどまっている」とグローバル経済の現状を説明した。

ジョンソン氏は、債券投資家には、①日本とドイツの国債利回りの低迷②国債発行残高の大幅な増加に関わらず、クーポン収入総額は頭打ち③欧州コア国と欧州周辺国のスプレッドが大幅に縮小――などの課題が突きつけられているとしたうえで、「債券投資家のインカム収入に対する需要は非常に強いものの、セカンダリー(流通)市場の流動性低下が継続していることなどから、債券市場では下振れ局面の到来が危惧されている」と指摘した。

このような状況を踏まえ、インベスコでは、ベンチマークや投資スタイルにとらわれず最良の投資機会を追求する「アンコンストレインド(制約されない)」アプローチを重視。「当社のグローバル債券トータル・リターン運用では、現金を資産の25%以上保有し、保有債券のデュレーション(残存期間)を短期化することでドイツ国債と米国債の金利リスクをほぼゼロに設定。高格付け国債など流動性資産の積み増しを図っている」(ジョンソン氏)。投資妙味のある銘柄として、金融劣後債、ハイブリッド債、高格付け社債を挙げた。

続いて登壇したインベスコ・パーペチュアルのグローバル株式 プロダクト・ディレクターのジョン・ボサム氏は、株式でもアンコンストレインド運用戦略を実践していると解説。「近年のグローバル株式市場では、市場規模と投資リターンに関係性がみられない。時価総額に基づく地域配分は重要でないといえるだろう。好パフォーマンスの実現には、個別企業のバリュエーション(割安度)分析に基づく長期投資がポイントだ」と語った。

注目銘柄には、配当利回りの上昇余地が高まっている「金融セクター」や経営陣の株主還元姿勢が大幅に改善したと評価する「石油セクター」、ディフェンシブ株に比べて株価が割安な「景気敏感セクター(エネルギー、素材、資本財など)」をピックアップ。ボサム氏は、「我々はアンコンストレインド運用戦略に基づくボトムアップ・アプローチと確信度に基づき、投資ウェイトを決定する」と締めくくった。