【PRI in Person】岸田首相の基調講演 PRI年次会議で岸田氏表明。90兆円規模の公的年金7団体がPRIへの署名準備開始へ
責任投資に関する世界最大の年次カンファレンス「PRI in Person」が2023年10月3日に東京で開幕した。42カ国から1300人以上が参加した同日に行われた岸田文雄内閣総理大臣の基調講演の内容をまとめた。
- 国際基準に適合する「クライメート・トランジション・ボンド」を2023年度から発行
- 金融庁に「サステナビリティ投資商品の充実に向けたダイアローグ」を2023年内に設置
- 資産運用業者やアセットオーナーの運用力向上やガバナンスの改善、資産運用業への新規参入と競争の促進など、資産運用立国の実現に向けた政策プランを2023年内に策定
- 日本の公的年金基金7団体によるPRIへの署名準備を開始
岸田首相、責任投資の推進に向けた日本の政策を4つ紹介
2023年10月3日、責任投資に関する世界最大の年次カンファレンス「PRI in Person」が東京で開幕した。

岸田文雄内閣総理大臣は基調講演の中で、世界の持続的な成長を実現する企業活動と投資を促すための特に重要な日本の政策として①GX(グリーン・トランスフォーメーション)への投資、②スタートアップへの支援、③人材育成の充実、④サステナビリティの取組を促す金融機能の強化──を挙げた。
日本は2050年のネット・ゼロ実現に向け、10年間で150兆円を超える官民投資を実現するため、カーボンプライシングの実施方針を含む基本的戦略を2023年7月にまとめている。岸田氏は「世界初となる、国が発行するトランジション・ボンドを『クライメート・トランジション・ボンド』と名付け、国際基準に適合するかたちで2023年度から発行する」と発表。再生可能エネルギーの導入拡大に向けた技術革新、水素など新たなエネルギー源や鉄鋼、化学、自動車などの産業設備など、民間投資のリード役となる明確な戦略と先進性を備えた研究開発技術実装などに、20兆円規模の国による先行投資を行うと説明した。
さらに、日本の一般投資家からグローバルな投資家まで、幅広い投資家層に魅力的なGX投資商品を開発するべく、金融庁にサステナビリティ投資商品の充実に向けたダイアローグを2023年内に設置するとした。アジアのGX投資に関しては、GFANZ(グラスゴー金融同盟)日本支部と連携し、官民で「アジアGXコンソーシアム」を2024年前半に設立する予定だという。これが1つ目のGXへの投資の概要となる。
2つ目の政策は、社会課題の解決に尽力するスタートアップへの支援だ。政府は、世界と日本の成長をリードするスタートアップを育てるため、2022年をスタートアップ創出元年として5カ年計画を策定している。「投資推進の鍵となるインパクト投資には投資家のコミットメントが欠かせない。インパクト投資に関する基本的指針を策定し、官民共同のコンソーシアムを2023年中に設立するなど、社会変革につながる資金調達の牽引役を果たしていきたい」(岸田氏)。
3つ目にリスキリングをはじめとする人的資本の充実だ。子供・子育て世帯の支援や女性の登用拡大などは、日本のみならず世界の最優先課題である。中長期的な企業価値の向上に不可欠な人的資本の充実について、企業と投資家の対話を促すべく、日本では2023年3月期決算から上場企業などに対して人的資本に関する情報開示を求めている。
4つ目は、サステナビリティの取り組みを促す金融機能の強化だ。日本には2100兆円を超える家計金融資産があるが、そのうちの約530兆円は保険や年金として大部分を資産運用業者やアセットオーナーが運用している。岸田氏は、「持続可能な社会の実現には、社会課題に応える企業に投資を振り向け、課題に応えない企業には必要な対応を求めることが大切。資産運用業者やアセットオーナーの運用力が重要になる」と強調。これらの運用力向上やガバナンスの改善、資産運用業への新規参入と競争の促進など、資産運用立国の実現に向けた政策プランを2023年内に策定すると発表した。
最後に岸田氏は、代表的な公的年金基金の少なくとも7基金(90兆円規模)がPRIに署名する準備を推し進めると表明。会場内は大きな拍手に包まれた。
この記事は会員限定です。
会員登録後、ログインすると続きをご覧いただけます。新規会員登録は画面下の登録フォームに必要事項をご記入のうえ、登録してください。