引き続き高い不確実性が見通される2024年の金融市場を、市場のプロフェッショナル達はどのように見ているのか。6つの質問への回答および各回答に対して寄せられたコメントを基に著名エコノミスト達の着眼点や見方を探るアンケートを実施した。(アンケート回答時期:2024年1月下旬~2月初旬)

▼ご協力いただいたエコノミストの皆様
  • 上野 泰也氏
    上野 泰也氏
    みずほ証券
    金融市場調査部 チーフ
    マーケットエコノミスト
  • 木内 登英氏
    木内 登英氏
    野村総合研究所
    エグゼクティブ・エコノミスト
  • 小山 賢太郎氏
    小山 賢太郎氏
    ドイツ証券
    調査部長・
    チーフエコノミスト
  • 浪岡 宏氏
    浪岡 宏氏
    T&Dアセットマネジメント
    チーフ・ストラテジスト
  • 馬場 直彦氏
    馬場 直彦氏
    バークレイズ証券
    調査部長
    チーフ・エコノミスト
  • 藤田 亜矢子氏
    藤田 亜矢子氏
    JPモルガン証券
    チーフエコノミスト
  • 森田 京平氏
    森田 京平氏
    野村證券
    チーフエコノミスト
  • 門間一夫氏
    門間一夫氏
    みずほリサーチ&
    テクノロジーズ
    エグゼクティブエコノミスト

”植田日銀”の1年間について

質問1 植田和男氏が日銀総裁に就任して1年を迎えます。この1年間の植田氏の日銀運営について100点満点で評価をする場合、どのような点数を付けられますか?

上野 泰也氏
みずほ証券 上野氏70点
前任者よりも金融政策の正常化に向けたポイントなどをわかりやすく説明する姿勢が明確。また、正常化に向けたステップを、タイミングを巧妙にとらえて、着実に踏んできている。
木内 登英氏
野村総合研究所 木内氏75点
YCCの柔軟化措置によって、事実上の正常化策に踏み切った点を評価。他方、政策修正のスピードが遅い点が問題。2%の物価目標のこだわりを捨てたうえで、早期により本格的な政策修正に乗り出すべき。
小山 賢太郎氏
ドイツ証券 小山氏80点
植田総裁が、大きな市場の混乱を起こすことなく、早期にYCCを事実上終了させたことを高く評価。一方、総裁の発言の振れが大きく、金融市場とのコミュニケーションの点では、課題が多かった。
浪岡 宏氏
T&Dアセットマネジメント 浪岡氏75点
市場に大きな動揺をもたらさずに、大規模な金融緩和策から少しずつ正常化を進めている点は素晴らしいと思う。市場とのコミュニケーションも黒田総裁時代と比べれば格段に良くなった。ただ、もう少し早めに対応していれば、ドル円もやや円高方向にシフトしていたと思われる。そしてインフレもある程度抑制されていただろう。そのほうが、一般の消費者にとっては良かったのではないだろうか。
馬場 直彦氏
バークレイズ証券 馬場氏未回答
藤田 亜矢子氏
JPモルガン証券 藤田氏70点
金融政策変更の条件や考え方などの点で市場とのコミュニケーションを改善させた。YCC修正に際して、事前示唆ができないことを予め伝えるなど率直なメッセージを送った。非常に困難な金融政策正常化をこれまでのところ混乱なく進めている。
森田 京平氏
野村證券 森田氏80点
言葉の選択で市場参加者との間で幾分、解釈のずれが生じたケースはあったと思われるが、総じて丁寧なコミュニケーションを図る姿勢が見て取れる。金融緩和を進める局面と異なり、緩和度合いを下げる局面においては、コミュニケーションの重要性が各段に高まる。この点を踏まえると、植田総裁に対する表岡は高いと言える。ただし今後はいよいよ実際の政策変更も想定される中、将来的に評価が変わることもありうる。
門間一夫氏
みずほリサーチ&テクノロジーズ 門間氏90点
長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の変更は誰が行っても難しい作業だが、2023年7月、10月の二度の柔軟化を経てさしたる混乱もなく事実上の撤廃まで進めてきた手腕は高く評価できる。マイナス金利解除に向けたコミュニケーションも、ここまで細心の注意を払い絶妙のバランスで行われてきたと評価。

日銀のマイナス金利政策の解除時期について

質問2 2024年中に、日本銀行のマイナス金利政策の解除はあると考えますか? あると予想する場合、いつごろになるとお考えですか?

上野 泰也氏
みずほ証券 上野氏4月にマイナス金利解除
主要企業の24年春闘の賃上げ動向を3月中旬以降に確認した上で、4月の日銀支店長会議で地方支店から上がってくる声もチェック。その上で、4月に展望レポートで物価見通しの上方修正を行いつつ、マイナス金利を解除するのが、流れとして最も美しい。なお、氷見野副総裁が、日銀は「全部青信号がともる」(すべての条件がクリアされる)まで待つわけではないと述べており、中小企業の賃上げ動向を十分確認するよりも前に、日銀は動く腹積もりだと推測される。
木内 登英氏
野村総合研究所 木内氏4月あるいは10月(10月の可能性がわずかに高い)
日本銀行は物価が上振れていることを捉えて、異例の金融緩和の修正に踏み切りたいと考えている。春闘(主要企業)の結果を踏まえたうえで、4月のマイナス金利政策解除が最短ケース。他方、物価上昇率が予想以上のペースで低下していること、賃金上昇率が期待に届かない可能性があること、FRBの利下げが実施されるとの期待が強まる中で円高リスクが高まることが制約で解除の時期が遅れる可能性がある。2%の物価目標を柔軟化したうえで、FRBの利下げが一巡するまで待つ場合には10月。
小山 賢太郎氏
ドイツ証券 小山氏3-4月の会合でのマイナス金利解除を予想
日銀が重視する今年の春闘の賃上げについては、3月中旬に明らかになる。当社は昨年を上回る4%の賃上げを予想しているため、それを確認した後の3-4月の会合でのマイナス金利解除を予想。3月は年度末にあたることや、4月に短観の発表や支店長会議を控えていることは4月の可能性を高める一方、判断が遅れるほど海外経済の減速や海外中銀の利下げ、国内政治の影響を受けやすいことは3月の可能性を高める。
浪岡 宏氏
T&Dアセットマネジメント 浪岡氏3月
3月でも概ね賃上げに関する情報は入ってくるだろうし、中小企業の賃上げの動向についても、業界内における先行的な企業の賃上げ動向から推測できるのではないだろうか。一方、4月には補欠選挙が予定されているし、米国経済の動向も気がかりである。また、折角、マイナス金利解除のタイミングが近づく中で、何らかの突発的な事象によりふいにすることは避けたいのではなかろうか。
馬場 直彦氏
バークレイズ証券 馬場氏4月会合
日銀は賃金・物価の好循環の達成に向けて、①賃上げと②賃金のサービス価格への転嫁を注視している。1月会合では、改めて春闘の重要性が確認されたとともに、サービス価格についてのポジティブな評価も加わった。当社では、4月会合までに入手可能な春闘の初期段階での結果と、会合前に予定されている4月支店長会議で報告される中小企業の賃金・価格設定に関するヒアリング情報を基に、4月会合でマイナス金利政策の解除に踏み切ると予想している。因みに当社の春闘賃上げ率予想は3.8%で、1990年代前半以来の高水準(3.6%)に達した昨年を上回るものと想定。
藤田 亜矢子氏
JPモルガン証券 藤田氏2024年半ばを予想
賃金上昇は春にも確認されるだろうが、好循環が生じていると確認されるほどに足元の国内需要は強くないため
森田 京平氏
野村證券 森田氏2024年4月
賃金・物価の好循環を巡って、(1)3月上旬の春闘関連イベント(例:3月15日の連合による第一回回答集計)で「物価→賃金」の流れ、(2)4月1~2日の3月調査日銀短観で「賃金→物価」の流れ、(3)4月中旬と見込まれる日銀支店長会議で中小企業の値上げ・賃上げの流れを確認した上で、4月決定会合でのマイナス付利およびYCCの撤廃を見込んでいる。
門間一夫氏
みずほリサーチ&テクノロジーズ 門間氏4月に解除
春季労使交渉の暫定集計値が良好であることを3月に確認し、4月1日の短観、その後の支店長会議での情報を総合的に分析したうえで、4月26日の金融政策決定会合で「2%物価目標の持続的・安定的な実現が見通せる状況になった」と判断すると予想。

日本の長期金利の見通しについて

質問3 2024年末に、日本の10年国債利回りの水準はどの程度になると予想されますか?

上野 泰也氏
みずほ証券 上野氏0.7%程度
マイナス金利解除後の追加利上げはないと予想しており、その場合、国債イールドカーブは徐々にブルフラット化すると見込まれる。10年債は一時0.50%まで買われるだろう。米利下げで為替が円高に動くことも、円債の買い材料になる。
木内 登英氏
野村総合研究所 木内氏0.8%程度
10年国債利回りの中長期の均衡水準は、+0.8%程度。短期金利が+0.3%までの上昇が前提。
小山 賢太郎氏
ドイツ証券 小山氏1.1%程度
早期のマイナス金利解除はすでに金融市場に織り込まれていること、そしてマイナス金利解除後も、日銀は緩和的な金融環境が維持されることを強調することによって、長期金利の上昇は緩やかなものに止まるであろう。国債買い入れペースは緩やかな減速が続くであろうが、ネット買入がマイナスになることは想定しない。一方、仮に金利が急激に上昇する場合には、国債買入の増額によって金利上昇圧力を抑制するであろう。10年国債金利が1%まで上昇しても、当社試算の均衡イールドカーブを下回ることで、緩和的な金融環境が維持できる見込み。
浪岡 宏氏
T&Dアセットマネジメント 浪岡氏1.1%程度
いくつかの前提を置いた上で、過去の長期金利と名目潜在成長率等の関係から推計すると相応に金利は上振れるとみている。また、2024年の年央以降は日本における消費活動は活発化し成長率を高めるとみている。これが金利の上振れに寄与するだろう。ただ、米国の経済動向や旺盛な債券需要が金利上昇圧力を削ぐ可能性もあるので注意している。
馬場 直彦氏
バークレイズ証券 馬場氏0.9%程度
日銀は2023年中にYCCを事実上形骸化し、1%を目途とする上限まで10年金利の上昇を許容したことに加えて、当社では4月にマイナス金利政策の解除を予想している。もっとも、超低金利に慣れ過ぎてしまっている各経済主体への配慮もあり、その後の利上げスタンスについては日銀は慎重にならざるを得ず、政策金利は年内0.25%程度に止まるとみている。しかし、利上げは実に17年ぶりであり、かつ極めて異例な政策の巻き戻しというシンボリックな面もあるため、イールドカーブには上昇圧力がかかりやすいだろう。具体的には、日銀買入によるストック効果を織り込んだ上で、10年金利は年末時点で0.9%程度を見込んでいる。ただし、1%を超えると投資家の需要が大幅に増加することで、歯止めが掛けられるとみている。
藤田 亜矢子氏
JPモルガン証券 藤田氏1.5%程度
日銀の国債買入方針次第の面もあるが、2%のインフレ目標の達成が定着する下では中立程度の金利水準を日銀が許容していくのが自然とみられるから
森田 京平氏
野村證券 森田氏1.0%程度
(1)マイナス付利の撤廃、(2)それを正当化する賃金・物価の好循環の進捗、(3)予想インフレ率の上昇を背景に、1.0%程度の10年国債利回りを予想。一方で、野村ではプラス金利政策やQT(量的引き締め)を見込んでおらず、1%台半ばや後半といった水準は想定していない。
門間一夫氏
みずほリサーチ&テクノロジーズ 門間氏1.2%程度
2%物価目標の実現と言ってもおそらく「ぎりぎり」の実現。賃金はそれなりに上昇しても、サービス価格の上昇圧力はあまり強くならない。日本社会には「物価は上がらないのが普通」という感覚が根付いており、それは根本的には変わらない。そのことが改めて認識される中で、日銀はマイナス金利解除後の利上げには慎重。短期金利は年末までに精々0.25~0.5%程度までしか引き上げられず、長期金利もそれを反映する程度の上昇にとどまる。

米国の長期金利の見通しについて

質問4 2024年末に、米国の10年国債利回りの水準はどの程度になると予想されますか?

上野 泰也氏
みずほ証券 上野氏3.0%程度
FRBが5月以降、利下げに動く中で、米長期金利は低下すると予想。11月の米大統領選でトランプ候補が返り咲きを決める場合には、「リスクオフ」で米国債が大きく買われる場面も。
木内 登英氏
野村総合研究所 木内氏3.7%程度
米国の成長率は想定以上に下振れ、FRBの利下げ幅はFOMCの想定である年内3下院利下げ幅を上回る。年末のFF金利は4.25%~4.50%へ。その場合、10年国債利回りは年末3.7%
小山 賢太郎氏
ドイツ証券 小山氏4.2%程度
QTを通じたグローバルなFree Float(政府債務のうち自由に市場で取引される債務割合)の上昇は、タームプレミアムを押し上げる可能性が高く、グローバルなイールドカーブのスティープニング要因として意識されるであろう。当社の予想では、G4(日米英欧)のFree Floatは、2020年:40%→2023年:50%→2025年:53%と、徐々に再び増加していく可能性が高い。これが利下げによる金利低下圧力を相殺すると予想する。
浪岡 宏氏
T&Dアセットマネジメント 浪岡氏3.8%程度
2024年末には2025年の利下げを意識しているだろうから、相応に金利低下圧力はかかるとみている。一方で、米国経済の底堅さは意識され、これが金利上昇圧力となろう。結果的には、金利低下圧力は短期ゾーンが中心で、長期ゾーンへの影響は限られ、イールドカーブはスティープ化するとみている。
馬場 直彦氏
バークレイズ証券 馬場氏4.35%程度
2023年秋から年末にかけて米国10年金利は大きく低下したが、米国経済の持続的な強さ等に鑑みるに、この低下は行き過ぎと当社では考えている。最近でも、経済は全体として一頃よりは減速しつつあるとは言え、例えば実質所得は堅調に増加を続けている。政策金利が高い水準にあっても米国経済は十分持ちこたえることができると市場で再評価されれば、10年金利は4.3%強まで再び上昇すると予想している。
藤田 亜矢子氏
JPモルガン証券 藤田氏3.65%程度
インフレ圧力は完全に払しょくされないだろうが、2024年半ば以降FRBが徐々に金利を中立水準に向けて引き下げていくことを想定
森田 京平氏
野村證券 森田氏3.95%程度
野村では、(1)2024年6月のFRBによる利下げ開始、(2)その後も2025年末に向けて利下げ継続、(3)同年後半のマイルドな景気後退を予想している。こうした中、米国の長期金利は低下が見込まれる。
門間一夫氏
みずほリサーチ&テクノロジーズ 門間氏3.5%程度
米国経済の減速とインフレの低下を背景にFedは4%強まで政策金利を引き下げると予想。それにつれて10年国債利回りもやや低下。ただし、2010年代のような低インフレ環境には戻らないと予想されるため、長期金利もコロナ前の2~3%のレンジまでは低下しない。

2024年、注目の地政学的イベントについて

質問5 2024年のグローバル金融市場に影響を与える地政学的イベントとして、最も注目されているものは何でしょうか?

上野 泰也氏
みずほ証券 上野氏米大統領選
トランプ氏勝利の場合、米国の経済政策や外交政策が断層的に変わる可能性が高いため。
木内 登英氏
野村総合研究所 木内氏米国大統領選挙
トランプ氏が再選された場合の経済政策、いわゆる「トランプノミクス2.0」は、世界経済と金融市場を不安定化させるリスクがある。輸入関税の引き上げで米国の物価高リスクが再燃する、拡張的な財政政策のもとでの財政赤字の一段の拡大から債券市場が不安定化する、国際競争力向上を狙った自国通貨安政策によってドル安のリスクが高まる、などが大きな懸念として挙げられる。日本では円高ドル安進行のリスクが最も懸念されるところ。
小山 賢太郎氏
ドイツ証券 小山氏米大統領選挙
米大統領選挙自体を地政学的イベントと言うのは適切ではないであろうが、その結果は、中国/台湾、ロシア/ウクライナ、イスラエル/パレスチナといった、現在における重要な地政学イベントの今後の行方に大きな影響を与える。
浪岡 宏氏
T&Dアセットマネジメント 浪岡氏中東情勢
中東情勢が緊迫化して原油価格が高騰したり、サプライチェーンが逼迫化したりした場合に、世界的に財の価格は上振れるだろう。インフレが再燃し、欧米での利下げを困難にしかねない。これは市場のメインシナリオをひっくり返すようなものとなるため、注意してみている。
馬場 直彦氏
バークレイズ証券 馬場氏米国大統領選挙
トランプ氏再選の場合、経済政策面や安全保障面で大きな変化がもたらされる可能性がある。特に経済政策面では、共和党が上下両院を制する場合には、新たな減税策が打ち出され財政赤字が拡大する可能性があるほか、FRBに必要以上の緩和姿勢を求める可能性があり、これらは金融市場に攪乱的な影響を与え得る。
藤田 亜矢子氏
JPモルガン証券 藤田氏米国大統領選
この帰趨次第では、サプライチェーンや関税の変更を通じた世界的なコスト上昇圧力が再燃しかねないから
森田 京平氏
野村證券 森田氏トランプ大統領が誕生したときの米国の政治動向
米国大統領選の結果、仮にトランプ大統領誕生となった場合には、(1)中国や北朝鮮に対する米国の姿勢がより強硬化、(2)米国によるイスラエルへの支援が継続することで中東での対立が継続、(3)ウクライナへの支援停止、などを通じて、地政学上の局面が変化する事態も想定される。
門間一夫氏
みずほリサーチ&テクノロジーズ 門間氏中東情勢の悪化
イスラエル・パレスチナ問題には有効な解決策がなく、周辺諸国情勢も不安定化する中でイランや米国が関与を強め、第5次中東戦争の様相を呈するリスクあり。その場合、原油の供給や船舶の航行に大きな影響が及びうる。

日本の機関投資家が注視すべき経済指標とは

質問6 日本の機関投資家が2024年の運用環境を展望する際に、「インフレ率」以外で最も注視すべき経済指標はなんだとお考えでしょうか?

上野 泰也氏
みずほ証券 上野氏米個人消費
グローバルな運用環境に最も大きく影響するのは、米大統領選のような政治要因を除くと、米国経済の強さであり、その主軸である米国の個人消費。これが今後もしっかりしていれば、米国株にポジティブだが、利下げの必要性が減じるので米国債にはネガティブ。消費が過熱するケース、逆に腰折れするケースでは、影響度合いは大きくなる。
木内 登英氏
野村総合研究所 木内氏賃金
賃金動向は、日銀のマイナス金利政策解除の時期に影響を与え、また解除後の金融政策運営にも影響を与える。さらに、賃金上昇ペースが想定よりも低くなれば、実質賃金上昇への期待が後退し、個人消費が下振れる可能性がある。それは株式市場にも逆風となる。実質賃金が上昇に転じるのは早くて2025年後半に。
小山 賢太郎氏
ドイツ証券 小山氏資金循環統計
2024年はマイナス金利政策が終了し、インフレ率の定着を確認する一年となるであろう。その結果、日本の投資家の投資行動にも変化がみられる可能性がある。それを包括的に確認できる資金循環統計に対する注目は一段と上がると当社は考えている。
浪岡 宏氏
T&Dアセットマネジメント 浪岡氏米国のISM製造業指数
米国経済がどのようなペースで減速するかにより、資産価格の推移は異なってくるはずだ。メインシナリオとしてはソフティッシュランディングを予想するが、高い政策金利が米国経済をハードランディングに向かわせる可能性は否定できない。米国経済の先行指標である同指標には注目している。
馬場 直彦氏
バークレイズ証券 馬場氏米国雇用統計
米国経済がソフトランディングを達成するには雇用・賃金の底堅さが必要であるが、逆に強過ぎるとFRBが利下げに転じ難くなり、その遅れがソフトランディングの芽を摘んでしまう可能性がある。従って、「適温」程度までの減速が必要となるが、それをFRBがどのように見定めるのかが鍵。
藤田 亜矢子氏
JPモルガン証券 藤田氏実質消費
この帰趨が、今サイクルでの日本のターミナルレートを決定する主要因になるから
森田 京平氏
野村證券 森田氏賃金、金利
「失われた30年」とも称される過去の局面と比べた時、現在の日本を象徴する経済的な変化として(1)値上げ、(2)賃上げ、(3)利上げという「3つの上げ」を挙げることができる。この点から、インフレ率に加えて、賃金、金利に注目したい。
門間一夫氏
みずほリサーチ&テクノロジーズ 門間氏世界経済の成長率
IMFは3%程度の経済成長を見込んでいるが、過去平均の3%台後半に比べて低い見通し。今後のこれがさらに下振れていくようであれば、世界経済の成長率が中長期的に下方屈折しつつあることの予兆かもしれない。その背景として、先進国の人口高齢化、中国経済の構造問題、地政学リスクの慢性的な増大、地球温暖化の影響などが考えられる