J-MONEYカンファレンス「プライベートアセット2.0 運用戦略の最前線と未来展望」 【特別講演】新時代のプライベートアセット戦略を考える講師:マーサージャパン 五藤智也氏
2023年7月11日、ステーションコンファレンス東京でJ-MONEYカンファレンス「プライベートアセット2.0 運用戦略の最前線と未来展望」が開催された。オルタナティブ資産の中でも特に多様性の高まりが目立つ「プライベートアセット」。今後その投資で注目すべき分野やアセットクラスは何か、投資する上での留意点はどこにあるかといった議論が交わされた。当日のプログラムから、「特別講演」の概要をお伝えする。
注目のプライベートデットは利回りと柔軟性が高まる
プライベートアセット(PA)と呼ばれるアセットクラスの中でも、不動産やプライベートエクイティ(PE)などは、1970年代ごろから提供が始まっていた。一方で、近年になって多くの機関投資家が活用するようになったインフラ投資やプライベートデット(PD)などは、2000年代に入ってきてから浸透しはじめた印象だ。そして現在も、新たな投資対象や投資商品へのアクセスが拡大しつつある。今回はそんな同投資における新たな投資機会について説明したい。
まずは、日本の機関投資家の関心が高いPD。同アセットクラスでは、銀行以外の貸し手による企業への貸付に投資を行うダイレクトレンディングが主流な投資対象として、同アセットクラスの成長をけん引してきた向きがある。ただし近年、それ以外にも様々な投資先が登場し、分散投資の余地が拡大している。
注目されている新たな投資対象には、資産プールの運用実績に依存するローンで構成される「ストラクチャードクレジット」、専門的な知見を必要とする特定分野への貸付である「スペシャリティファイナンス」、不動産デットやインフラデットなど実物資産を対象とした貸付である「資産担保融資」といった分野が挙げられる。
日本の企業年金の場合は、PD投資に高いリターンを求めることは少ない。そこで、特に弁済順位の高いシニアのダイレクトレンディングを対象としたPDをコアとしつつ、比較的安定感のある不動産・インフラデットなどに分散投資を行う方針も考えられよう。なお、クレジット市場や株式市場における混乱から収益を獲得する「クレジットオポチュニティ」と呼ばれる分野のPD戦略も登場してきたが、必要に応じてこうした戦略を活用し、市場の混乱もリターンとして享受できるといった柔軟性が高まってきている点も、近年のPDの動きとして認識しておきたいポイントだ。
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