米欧:「スーパーコア指数」に注目

山川 哲史
バークレイズ証券
調査部長・チーフエコノミスト
山川 哲史

新型コロナウイルス禍を契機に加速した世界的なインフレは、一部鎮静化の兆しこそみられるものの、未だ収束するには至っていない。今回のインフレは、その背後に、初期局面で「一過性」との判断に固執し続けた中銀による初動の遅れ、グローバルサプライチェーンの毀損(きそん)に伴う供給制約、さらには米国における労働参加率停滞に象徴される、家計の行動変容など、需要・供給双面における循環・構造的要因が複雑に絡み合っており、その着地点を正確に予測することは困難だ。

同時に中銀は、拙速、かつ過大な引き締めが、先行きの景気後退に繋がるリスクを認識しつつも、ターミナル金利(利上げ局面における最高到達点)に対する目線を引き上げながら、利上げ継続を余儀なくされている(図表)。

■ターミナル金利は着実に上昇
ターミナル金利は着実に上昇
出所: ブルームバーグ、バークレイズ・リサーチ

インフレを巡る不確実性は、物価上昇の内容にも投影されている。米国におけるCPI(消費者物価指数)上昇率の動向を費目別に見ると、財価格については供給制約の後退もあって上昇ペースが鈍化しつつある。一方、労働集約的で賃金上昇の影響を受けやすいサービス価格についてはなお、騰勢が緩和するには至っていない。

Fed(米国連銀)が特に注目しているのが「スーパーコア指数」の動向だ。同指標はその対象を、賃金に対する感応度が高い住居費を除くサービスに限定することで、基調的なインフレ率を把握することを目的としている。

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