プライベートアセットのトリセツ 第5回 投資先に大きなオーナーシップを行使できるプライベート投資はインパクト投資と相性良し
伝統的資産にはないリターン特性や分散投資への貢献などの利点から、プライベートアセットへの注目度は高まる一途だ。ただし、同アセットクラスはその性格上、投資に特殊な知識を要したり、特別な注意が必要だったりする。連載「プライベートアセットのトリセツ」では、そんなプライベートアセットを使いこなすコツを、マーサージャパン 資産運用コンサルティング シニアコンサルタントの細谷弥穂氏の話を基に紹介していく。第5回はプライベートアセットにおけるインパクト投資について取り上げる。
インパクト投資の資産残高が4年間でプラス339%に
環境および社会に悪影響を与える企業への投資が敬遠されるトレンドの一方、持続可能な経済活動への資本配分が増加している。いまや規制当局やステークホルダーからの要請に応えるためだけでなく、純粋にアセットマネジメントの視点でも、リスク低減や投資機会を見極めるためにESG(環境・社会・企業統治)要素を考慮することは不可欠だ。
まずはESG投資の概観を振り返ろう。GSIA(世界持続的投資連合)によると、ESG投資の資産残高は、2016~2020年で55%増加し、欧州、米国、カナダ、豪州、日本の5市場で35兆3000億ドルに達した。
その間、主なESG投資の手法は、投資ユニバースの構成銘柄・案件をESG視点で選別する「スクリーニング」から、従来の投資判断にESG視点を盛り込む「ESGインテグレーション」へとシフトした。
そんな中、投資先の企業・案件が社会・環境に対してどれだけ貢献するか(インパクトをもたらすか)を重視して投資判断を行う「インパクト投資」は、現状ではESG投資全体に占める割合は小さいものの、2016年から2020年にかけてプラス339%と急速に成長している(図表1)。とりわけインパクト投資の成長が見られるのが、水インフラや金融サービス、ヘルスケア、エネルギー、不動産などの領域だ。
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