経済指標を読み解く 60万人割れが懸念される2026年(丙午)の出生数~人口動態統計
戦争の影響が大きかった出生数の変動
戦後の厚生労働省の人口動態統計は1947年から存在する。戦地から戻った人たちが結婚をしたので、婚姻件数は1947年93万件、1948年95万件と90万件台の多さだった。その後低下し1951年から1954年まで60万件台で推移し、上昇基調になる。ピークは1971年の110万件だった。
ベビーブームは婚姻件数の2つの山に対応する。1947年から1949年が第1次ベビーブーム、特に1949年の出生数は269万6638人と戦後最高を記録した。この3年間に生まれたのが、いわゆる団塊の世代である。大学進学者は、学生運動が最も盛んな時期に当たった。社会人として高度経済成長やバブル景気を経験してきた。
2025年は団塊の世代が、75歳以上の「後期高齢者」となる年として注目されている。団塊の世代が、一斉に後期高齢者になることにより、介護や医療費などの社会保障費の増加が懸念されている。
1973年の209万人をピークに出生数減少
団塊の世代の子供たちの結婚のピークは1971年。1970年から1974年まで100万件の大台に乗った。団塊の世代の子供たちが主に生まれた時期が1971年から1974年の第2次ベビーブームである。年間の出生数は200万人台であった。
出生数のピークは1973年の209.2万人であった。しかし、その後、出生数は減少傾向を辿り、1984年に150万人割れの149万人、2016年には100万人割れの97.7万人になった。
少子化の原因としては、「未婚化の進展」、「晩婚化の進展」「夫婦の出生力の低下」、これらの背景にあるものとして「仕事と子育てを両立できる環境整備の遅れや高学歴化」、「結婚・出産に対する価値観の変化」、「子育てに対する負担感の増大」「経済的不安定の増大等」が挙げられる。最近ではコロナ禍の影響も大きい。
少子化が進むと、現役世代が支える社会保障制度が揺らぐ。また、労働投入も減り経済の成長力が低下する。そのため子どもを産み育てやすい環境整備が急務と言われて久しい。1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率が、第1次ベビーブームの時には4台だったのは遥か昔の話で、75年からは1台が続いている。
過去最低だった2005年の1.26を底に回復し2015年には1.45まで戻り、少子化対策の効果がいくらか出てきたかと期待されたものの、その後は低下に転じ2021年には1.30になってしまった。
丙午の迷信が残っているかどうかが鍵
2021年に出生数は過去最少の81万1604人となった。2022年も出生減に歯止めがかかっていない。
厚生労働省の人口動態統計月報(概要)によると、過去1年間の出生数は2021年6月~2022年5月で79.6万人と80万人を割った。その後2021年8月~2022年7月の1年間で78.6万人に低下した。
2022年1~7月の出生数は65.9万前年同期比マイナス5.5%の減少である。9月分までわかる速報値(日本における日本人、日本における外国人、外国における日本人及び前年以前に発生した事象を含)でみると、1~9月前年同期比はマイナス4.9%である。今年は初めて80万人を割り込む可能性が大きいと言われている。
もっと心配なのは2026年である。60年に一度の丙午に当たる。「丙午生まれの女性は気性が激しく夫を不幸にする」という迷信があり、前回1966年の丙午では出生数は前年比マイナス25.4%と大きく落ち込んだ。それでも136.1万人が生まれた。合計特殊出生率は1965年の2.14から1966年は1.58に低下した。翌年1967年は2.23に戻ったが、1.58は1989年1.57に破られるまで、最低水準だった。
2026年に丙午の迷信を信じる人が減っていればよいのだが、迷信を信じる人が依然多く前年比2割減になるとしよう。2022年が前年比マイナス4.9%で77.2万人になり、2023年から2025年の3年間が各々前年比マイナス1%という比較的楽観的な見通しを置いても、2026年は59.9万人と60万人を割り込んでしまう。