2021年10~12月期の実質成長率は年率4.6%に下方修正

角田 匠(信金中央金庫)
信金中央金庫
地域・中小企業研究所
上席主任研究員
角田 匠

2022年3月9日に2021年10~12月期のGDP(国内総生産)改定値が公表され、実質成長率は前期比年率4.6%と1次速報値(5.4%)から下方修正された。

個人消費が前期比2.7%増から2.4%増に下方修正されたほか、公共投資は前期比3.3%減から3.8%減へとマイナス幅が拡大した。

法人企業統計の結果を受けて設備投資も前期比0.4%増から同0.3%増に下方修正されたが、2四半期ぶりのプラスと持ち直している。もっとも、半導体や機械部品の不足といった供給制約が尾を引き、2021年7~9月期の落ち込み(同2.4%減)を取り戻せなかった。

東南アジアからの部品調達難は解消されつつあるが、2022年の年明け以降は新型コロナウイルスの感染が生産現場にも広がり、操業停止に追い込まれる工場が相次いだことから機械設備や関連部品の生産に遅れが生じている。

供給制約は、当面も設備投資の回復を抑制する要因になるとみられる。

業種別で明暗が分かれる設備投資

一方、設備投資の先行指標とされる機械受注(船舶・電力を除く民需)は回復の動きを維持している。

2021年10~12月期は前期比6.5%増と3四半期連続で増加するなど企業の投資マインドは上向いている。2022年1~3月期の受注見通しは前期比1.1%減とマイナスが見込まれるが、製造業は前期比5.0%増と4四半期連続で増加する見通しである。

2022年1~3月期の押し下げ要因となるのは非製造業(船舶・電力を除く)で、前期に比べて8.5%の減少が見込まれている。金額ベースでみると、製造業がコロナ禍前の2019年の水準を超え、直近のピークである2018年を上回るレベルまで回復しているものの、非製造業は停滞局面を脱しきれない状況にある。

【図表】業種別機械受注の推移(年率換算)

図表
出所:内閣府「機械受注統計」

設備投資の動きに明暗が生じている原因は、企業収益の回復格差である。

財務省が公表した2021年10~12月期の法人企業統計によると、2019年を100とした経常利益の水準は、製造業が137.6まで回復する一方、非製造業は100.9とようやくコロナ前の水準まで持ち直した程度である。

年明け以降は、感染再拡大を受けて非製造業の収益環境は再び悪化しており、投資スタンスも慎重化しているとみられる。

設備投資の先行き不透明感が強まる

2022年度についても、新型コロナウイルスの感染一服と再拡大が繰り返されるリスクは小さくない。その場合、非製造業の収益回復の遅れから設備投資全体にも回復の動きが広がってこない可能性が高まる。

また、ロシアによるウクライナ侵攻で世界経済の先行き不透明感が強まっていることも懸念材料である。原油価格の高騰長期化や紛争によるサプライチェーン(供給網)の混乱で世界経済の下振れリスクが高まっており、製造業の設備投資の拡大にもブレーキがかかる可能性がある。

現時点の経済見通しでは、2022年度にかけて製造業をけん引役に設備投資の回復テンポが高まるとの見方を維持しているが、ウクライナ情勢の深刻化で設備投資の回復シナリオは揺らぎ始めている。