日本では近年、富裕層・準富裕層の増加や資産形成ニーズの高度化を背景として、ウェルスマネジメントへの関心が着実に高まりつつある。本連載は、日本におけるウェルスマネジメントに対する理解や普及を目的として、先行して成熟してきた欧米の取り組みなどグローバルな視点から、その本質や最新動向を考察するものである。
第2回は、手数料無償化の実現やステーブルコイン領域への取り組みなど、日本の金融サービスの変革に先駆的に挑んできたSBIホールディングスの朝倉智也氏を迎える。日本の規制環境のなかで、銀行・証券・保険といった業態の枠組みを超え、金融サービスの包括的なプラットフォーム化を進めるSBIは、ウェルスマネジメントのあり方そのものをどこへ導こうとしているのか。その未来像を聞いた。
監修:国際社会経済研究所(IISE)

SBIホールディングス代表取締役副社長朝倉智也氏

SBIホールディングス
代表取締役副社長

朝倉 智也氏

1966年生まれ。慶應義塾大学文学部卒。北海道拓殖銀行、米国メリルリンチ証券を経て、米国イリノイ大学大学院経営学修士号(MBA)取得。2004年からSBIグローバルアセットマネジメント(旧モーニングスター) 代表取締役社長。SBIホールディングス株式会社の代表取締役副社長としてSBIグループ全体の資産運用事業・デジタルアセット事業を統括。SBIアセットマネジメント代表取締役会長兼CEO。SBI岡三アセットマネジメント 取締役。

金融サービスの包括的なプラットフォーム化を推進

まずSBIグループが目指す方向性について伺いたい。

朝倉 SBIグループは1999年の創業以来、証券・銀行・保険といった金融サービスを業態ごとに切り分けるのではなく、それらを一体として捉える「企業生態系」の構築を志向してきた。これは創業者である北尾吉孝が当初から持っていた発想であり、現在までグループ全体に一貫して共有されている。

事業構築の基本観として、「顧客中心主義」の徹底と「革新的技術に対する徹底的な信奉」がある。証券手数料の価格破壊や“好金利”預金商品の提供、保険料の低価格化など、従来の金融機関の収益モデルを根本から見直してきた実績がその具体例である。

インターネットという技術革新により、分断されていた金融機能を一体として設計できる環境が整った。北尾はこの変化を背景に、あらゆる金融サービスを一つの窓口で提供し(ワンストップ)、グループ内でデータや機能を統合的に管理したうえで(ワンテーブル)、顧客一人ひとりの状況に応じたかたちで提供する(ワントゥーワン)という考え方を掲げてきた。これら3つは独立した概念ではなく、段階的に高度化していく連続した価値提供のプロセスでもある。

このプロセスによって、顧客は複数の金融機関やサービスを個別に使い分ける必要がなくなり、一元化されたサービスを受けられるようになる。また、こうした戦略の根底には「未来は予測するものではなく、自ら創るものである」という思想があり、日々の投資判断や事業展開にも強く反映されている。

2025年には、当グループはドイツの新興銀行Solaris SEを買収した。これは単なる銀行の買収ではない。預金・貸出・送金といった銀行機能が、従来型銀行だけでなく、多様な事業者によって提供される時代への変化を見据えた、次世代バンキングへの戦略的な投資である。

BaaS(Banking as a Service)を手がけるSolaris SEは、銀行機能をAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)として外部に開放することで、多様な事業者が自らのサービスに金融機能を組み込める基盤を構築してきた。そこに体現されているのは、銀行を一つの「業態」としてではなく、「機能」として捉え直す発想であり、金融の提供主体が拡張していく未来を先取りするものだ。

BaaSを含め、FPaaS(Financial Platform as a Service)の観点ではどのような取り組みを進めているのか。

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