インフレ、金利の不確実性やオルタナ資産の高まるボラティリティなど資産運用を取り巻く環境が複雑化の一途を辿るなか、機関投資家にとって「分散ポートフォリオ」の構築は引き続き必須課題だ。しかし、予期せぬ市場環境の変化やイベントの発生により、意図した通りのリスク分散が効かなくなるケースもあるだろう。金利復活下で真に機能するポートフォリオの最適解を探る特集「『金利ある世界』における年金基金・金融法人・大学の資産運用」。パリに本社を構える運用会社CAPZA(キャプザ)は、分散投資先として注目するアセットクラスとして、欧州ミッドマーケット向けプライベートデットを挙げる。

クリストフ・ヴュリエ氏
CAPZA
プライベートデット部長
クリストフ・ヴュリエ

当社では、足元のPD(プライベートデット)市場を引き続き魅力的な投資機会があるとみているが、数年前と比べると明らかに選別が必要な局面に入ったと考えている。単に資産クラスへのエクスポージャーを取るだけではリターンを稼ぎにくく、選別的に市場や案件、条件を絞って投資することがこれまで以上に求められている。

最近、耳目を集めているプライベートクレジットを巡っては、一部で懸念の声も聞かれるが、当社はこれを広範なクレジットファンダメンタルズの崩壊とは見ていない。むしろ本質的な論点は、投資対象そのものではなく、案件のストラクチャーが現実的に提供可能な流動性を超える約束になっているか否かという流動性管理の問題と捉えている。

そんななか、特に投資妙味があると考えるのが、欧州ミッドマーケット向けPDだ。欧州は米国市場に比べて地域ごとに分断性と地域性が強く、オリジネーションや与信判断を画一化しにくい市場である。

だが、この特性ゆえに非効率性が残りすく、適切なソーシング力と分析力を持つ運用者にとっては、プライシングや件設定の面で投資機会を見出しやすいと考えている。

加えて、投資機会の内容も変化している。従来のPE(プライベートエクイティ)スポンサーによるM&A(合併・買収)ファイナンスにとどまらず、リファイナンス(借り換え)、アメンド&エクステンド(ローンの条件変更)、テーラーメイドの資本ソリューションの重要性が高まってきている。M&A環境が以前ほど活発でないなかでも、リファイナンスニーズを抱える健全な企業に対して柔軟な資金を提供できる能力が投資機会の源泉となっている。

アルファ(超過収益)獲得の源泉も変わってきた。数年前であればスプレッド水準そのものがアルファ源泉として捉えられる局面もあったが、現在では、ドキュメンテーションの質やコベナンツの強さ、セクター選定、そして投資後の能動的なモニタリングが、リターンの質を左右する度合いを強めている。

今後も欧州では銀行融資の後退や借り換え需要がPD市場の追い風になると見ているが、一方で、過度なレバレッジ、条件の悪化、PIK(繰延利息)への依存、流動性ミスマッチなどには十分注意が必要である。プライベートデットは有効な分散投資先たり得るが、その効果を生かすには、資産クラスの特徴を一般論で捉えるのではなく、案件構造と投資規律を厳しく見極める姿勢が欠かせない。