電気の絶縁材料からスタートして現在、半導体関連材料や光学フィルムなどを製造する日東電工の企業年金基金を訪問しました。総幹事の三菱UFJ信託銀行出身の増岡弘樹(ますおか・ひろき)常務理事は、債券や投資信託に関する豊富な経験を基に、オルタナティブ資産を主な収益ドライバーにした分散運用を徹底しています。

日東電工企業年金基金は、かつての本社で現在は茨木事業所となっているオフィスに入居している=大阪府茨木市下穂積1丁目で

「ニッチトップ」標榜、中間材の大メーカー

日東電工の2024年3月の連結売上高は9151億円。消費者が日常意識しない液晶テレビ用の偏光板や熱はく離シート、水の浄化に使われる逆浸透膜など中間材料を手がける「隠れた大企業」だ。ニッチな領域でのトップを目指している。

日東電工企業年金基金の概要

  • 所在地/大阪府茨木市下穂積1丁目
  • 設立年月/厚生年金基金(1966年設立)の代行返上で2005年3月に設立
  • 資産総額/約870億円
  • 加入者/約8000人 受給者/約3000人
  • 予定利率/2.5% 期待運用収益率/3.2%

(いずれも2024年3月末現在)

リスク・レベル「低・中・高」で資産配分

事前にいただいた回答で、政策アセットミックスが通常とは異なる形式になっていたのが目を引きました。

増岡 「伝統4資産とオルタナティブ」といった形ではなく、「低リスク資産」「中リスク資産」「高リスク資産」の3分類です。この形式になったのは2013年で、私が基金に着任する2年前のことです。2008年のリーマン・ショックで大きな損失を被り、緊急事態にも対応できるようリスクを抑えた運用を目指して導入したと聞いています。「リスク抑制」ということであれば、資産区分自体を「リスク・レベル別」にすれば良いのではないか、という発想ですね。それ以前は内外株式や上場リートも合計4割ほど保有するなど、一定のリスクを取る資産配分でした。

なるほど。リスク・レベルの3段階はどのような数値区分なのですか。

増岡 「低」がリスク5%以下、「中」が5%から10%、「高」が10%超としています。現行の政策アセットミックスは【図表1】のようになっています。

【図表1】日東電工企業年金基金の政策アセットミックス
配分比率 資産の内訳
低リスク資産 45% 生保一般勘定、内外債券、低リスクFoHF(ファンズ・オブ・ヘッジファンド)、キャッシュなど
中リスク資産 45% マルチアセット、絶対収益資産、非流動性資産(プライベート・デット、ヘッジ付きプライベート・エクイティ)など
高リスク資産 10% 内外株式、非流動性資産(プライベート・エクイティ)など

注:2024年3月末現在

当初はマルチアセットがコア資産

この政策アセットミックスに変更してから12年経過したとのことですが、資産配分などはそのままですか。

増岡 いえ、中身は相当変化しています。当初はマルチアセットがコア資産で、全体の35%程度を占めていました。運用者が資産配分を機動的に変化させることで、リスク分散に寄与するという謳い文句でした。しかし、コロナ前の10年間は世界的にマネーがじゃぶじゃぶの低金利状態。マルチアセットは力を発揮するというより、インデックスに対して負けが続くような状態でした。特に「リスク・パリティ型」と呼ばれる各資産のリスク割合を均等にする運用商品は、リスクのみならずリターンまで低減してしまいました。このため、このタイプは私が早々に全廃し、マルチアセット全体も現在では15%を切る水準です。

プライベート・エクイティのFOFがドライバー

そうすると収益源の柱は何になったのですか。

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