米株市場の“ハイテク株一本足打法”が崩れたとき、何が起こるだろうか
米国株に潜むリスク

グローバルマーケット統括本部 副会長
チーフクレジットストラテジスト
チーフESGストラテジスト
中空 麻奈
米国株はずっと堅調に推移してきた。2024年は景況感も含めて、結局米国一人勝ちであったと評されているが、そこには当然米国株の堅調さの後押しが多分にあった。しかしながら、その米国株の躍進はハイテク株を中心にした一本足打法であり、何でもかんでも株価が上がるようなバブルでは決してない。
図表1を見て欲しい。これはSmall Cap(小型株)をLarge Cap(大型株)で割っただけの指標だ。この指標がどんどん落ちてきている。
つまりは、Small Capが下落し続けているか、Large Capが上昇し続けているか、ないしは両方が起きているか、のどれかしかない。ただ、ハイテク株の一本足打法でけん引される米国株の構図を思えば、「Large Capが上昇し続けてきた」と考えるのが自然だ。

このところ、トランプ大統領の関税政策が厳格化されれば、企業業績にも関わるとの見立てから内需関連株に買いが入っているという報道もある。これから法人税減税が決まったり、現在EBIT(利払い・税引き前利益)の30%を損金として算入できるのが、EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)の30%まで拡大するといった規制緩和が決まったりすれば、米国企業収益の後押し、とりわけ設備投資が大きく減価償却費を計上するようなセクターにとっては大きな後押しが期待できることになる。
有形資産の大きい産業は、ラストベルト(さびた工業地帯)と呼ばれる米中西部に多い重厚長大系であると考えれば、収益増加の期待感からハイテク株以外の銘柄に買いが入るのは理解でき、内需関連株に買いが入っているという先の報道とも整合的だ。
しかし、「そうとは言え」だ。株価を形成する期待感は、企業収益を恒常的に上げていくものでなければ長続きしない。その意味ではこれから世界を席巻しうる技術や分野は、AI(人工知能)や半導体、IoT(モノのインターネット化)を除くとそれほど多くないことも確かである。
ハイテク株の急落が仮にあれば、米国株市場の様子は一変する可能性が大きい。そこで、2025年もおそらくはハイテク株のけん引する市場となろうが、仮にこれが壊れる場合には何が起こるのか。本稿はそうしたシナリオをグレイ・スワン的に考えてみることにする。
ハイテク株を起点とする市場急落の可能性
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