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マクロ経済 YCCの「形骸化」は金融緩和解除にどう影響するか
矛盾する市場と日銀の見解
日本銀行は2023年10月30~31日の金融政策決定会合において、YCC(長短金利操作)運営のさらなる柔軟化を決定した。これに先立つ同年7月の柔軟化においては、10年国債買入れの連続指値オペを毎営業日実施する利回り水準をそれまでのプラス0.5%からプラス1.0%に引き上げ、10年金利の許容変動幅を拡大させていた。同年10月の決定では、毎営業日連続指値オペの実施方針を取り下げるとともに、プラス1.0%を10年金利の「厳格な上限」から「目途」に位置づけ直し、10年国債利回りがプラス1.0%を上回ることを事実上許容した。
10年国債金利の誘導目標をゼロ%程度としつつ、現実には、それがプラス1.0%を上回ることを許容した点で、YCCはほぼ形骸化したと解釈する市場関係者は多い。同時に、YCCの形骸化により、YCCの解除や廃止はもはや時間の問題となったとの見方も増えている。
こうした見方は、少なくとも日銀の公式見解とは矛盾する。10月決定会合の声明文では、「内外の経済や金融市場を巡る不確実性が極めて高い中(中略)金融市場で円滑な長期金利形成が行われるよう、長短金利操作の運用において、柔軟性を高めておくこと」が狙いであり、「こうした運用の下で、日本銀行としては、粘り強く金融緩和を継続する方針」を変えていないことを明示している。
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