債券・株式をはじめ、広範なアセットクラスが下落した2022年は、機関投資家に一段のリスク対応を講じる必要性を痛感させた。今回は、頑健なポートフォリオ構築の次の一手として注目される、ヘッジファンドを活用したリスク分散について、運用会社・運用コンサルタントに話を聞いた。
粘着性インフレがもたらす視界不良。収益源泉の多様化がリスク分散の肝に
2022年、各国中央銀行がインフレ退治に本腰を入れ、金利の引き上げに動き始めたことで、金融市場は大きなレジーム転換を迎えた。リーマン・ショック以降、市場を支配していた流動性相場が終焉を迎え、それに立脚していた株式やクレジットなどのリスクアセットのバブルが崩壊。さらに金利上昇が債券のキャリー運用に深刻な運用難をもたらしたことで、広範なアセットクラスで価格調整が発生した。
MCPアセットマネジメントのマネージング・パートナー藤井俊氏は、「通常はこうしたディスロケーション(市場混乱)の後には新たな収益機会が見込めるが、現状、予想外に粘着性を見せるインフレがジョーカーになっている」と述べ、引き続き伝統的資産を中心に先の見通せない運用環境が続いていると苦境を説明する。「多くの機関投資家は、日本銀行のYCC(長短金利操作)撤廃で10年物国債が1%程度の金利水準を回復し、再び安定運用の土台として有望な投資先になるとのメインシナリオを描くが、スタグフレーション突入の懸念も囁かれる中、シナリオ通りいくかは確率のゲーム。まっとうな投資家であれば、メインシナリオが崩れるケースも考慮しているはずだ」(藤井氏)。
実際、多くの機関投資家が市場の不確実性に身構える。言うまでもなく、ポートフォリオの一段のリスク分散を図ることが必要であり、複数のアセットクラスに分散投資を行うバランス型ファンドなどに多くの関心が寄せられている。ただし、マン・グループ・ジャパンの大石佳敬運用第三部長は、「分散投資の観点で、資産クラスの幅を広げることは重要だが、それだけでは2022年のような市場全体の下げ局面で安定運用の基盤を守れなかった。海外投資家を見ていても、運用手法(戦略)の分散をどの程度強く意識してきたかが、ポートフォリオの安定性という観点では大きな差に繋がった局面だった」と強調する。
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