優秀な人材確保へのアピールにも

3つ目の健康経営格付融資は 2012年スタートとDBJの評価認証型融資の中では最も新しい商品だが、 2018年度の1年間では取得企業が一 番多かった。

橋本 ここ数年、人手不足や長時間労働の社会問題化などを背景として、企業と働く人の関係が構造的に変化しつつある。その中で、中長期的な成長を支える基盤として健康経営に取り組む企業が増えてきている。企業側には、働き手から選ばれるような、健康や働きがいにも配慮したチャーミングな職場づくりが求められているのだ。

DBJでは、従業員の心身の健康維持・増進と企業成長の同時実現を目指す、各社の戦略と一体となった健康経営の取り組みを重視している。評価項目は、労務管理・安全衛生上のリスクコントロールを問う「健康管理」と、予防医学的な健康面と組織の活性化に向けた働き方の双方の視点で、企業価値向上に資するアップサイドの取り組みを問う「健康経営」から構成される。

評価認証型融資制度

2019年4月に健康経営格付を取得した家電専門小売企業は、社長をトップとする部門横断的な健康推進体制のもと、心身と働き方に関する多様なデータ分析を踏まえた生活習慣改善施策の取り組みやFA制度など働きがいを向上させる仕組みを有している点などを評価させていただいた。

水口 人手不足が深刻化する中、優秀な人材の確保は企業の持続的成長に欠かせない。健康経営格付は、従業員を大切にする企業であることを広くアピールする有効な手段といえる。

企業のサステナビリティ経営の最大の課題は、大規模災害を引き起こす「気候変動」と社会不安を増幅する「経済格差」だろう。気候変動はCO2を減らすことが大事だが、経済格差の拡大は何に配慮すれば止められるのか誰にも分からない。ただし、人々が健康で長く働けるようになれば、定期収入の道がひらけ、経済全体を合理的に底上げできる可能性がある。健康経営格付は、社会の安定性と持続性を高めるポテンシャルを秘めた取り組みといえる。

DBJの評価認証型融資は、企業と日本社会全体のサステナビリティのレベルを上げる効果が見込めそうだ。

木村 我が国の産業界も、気候変動や人口減少、技術革新など大きな外部環境変化の中で、経営の時間軸を伸ばしてリスクと機会に向き合う必要がある。DBJは長年にわたって長期のリスクマネー供給に携わってきたが、環境・BCM・健康経営の3格付で構成する評価認証型融資には、お客様との対話を通じたノウハウが詰まっている。経営規模や業種を問わず、非財務の取り組みを通じて持続的な価値創造を目指す様々な企業にご活用いただきたい。