日本政策投資銀行(DBJ)は、独自のスクリーニングシステムによって①環境 ②BCM(事業継続管理) ③健康経営──のそれぞれの取り組みに優れた企業を評価・選定し、その評価に応じて融資条件を設定する「評価認証型融資制度」を強化している。同制度の現状と意義について、同行担当者と内外のサステナブル金融に詳しい高崎経済大学 経済学部 教授の水口剛氏が語り合った。(取材日:2019年8月5日。コーディネーター:J-MONEY編集長 柴田哲也)

出席者
■出席者(写真左から)
日本政策投資銀行 サステナビリティ企画部長 木村 晋
高崎経済大学 経済学部 教授 水口 剛
日本政策投資銀行 サステナビリティ企画部 課長 環境格付主幹 八矢 舞子
日本政策投資銀行 サステナビリティ企画部 BCM格付主幹 蛭間 芳樹
日本政策投資銀行 サステナビリティ企画部 健康経営格付主幹 橋本 明彩代

非財務評価を融資条件に反映

DBJが企業のサステナビリティ支援に力を入れる背景は。

木村 DBJでは、現在進行中の第4次中期経営計画以降、社会の持続的発展に貢献する「サステナビリティ経営」を改めて使命として掲げ、取り組みを強化している。経済価値と社会価値の長期的な両立を追求するスタンスは、時代は変われども一貫するDBJの経営 姿勢だ。

具体的なサービスとしては、長期のファイナンスを検討するにあたって、企業の非財務情報に着目して潜在的な価値に光を当て、顧客の長期的かつ持続的な成長をサポートする取り組みを企図している。

企業の非財務情報をベースに投融資する手法は、海外ではどのような状況か。

水口 非財務情報を考慮した投融資自体は以前から行われていたが、国際連合が2006年に責任投資原則を公表したことで、「ESG(環境・社会・ガバナンス)課題への対処は金融業界関係者のリスクマネジメントと社会的責任」との理念が世界中に広まった。投資対象資産も株式から債券やインフラ資産などへと広がりをみせている。最近では、グリーン・ローン原則やサステナビリティ・リンク・ローン原則など、融資にもESGを組み込む動きが始まっている。

ところが、このサステナビリティ・リンク・ローン原則の仕組みを詳細に見ると、DBJが以前から提供している「環境格付融資」によく似ている。ESGは株式投資の世界では欧米が先行して日本が後から追いかける構図だが、こと融資をベースにした金融商品や企業支援に関しては、日本のほうが進んでいたことに一周回って気がついた状況といえるだろう。

座談会1

木村 DBJでは、40年以上の環境対策事業に対する3兆円以上の投融資実績で培った知見を基に、2004年に環境格付融資、2006年に「BCM格付融資(2011年に防災格付融資から現名称に変更)」、2012年に「健康経営格付融資」を開始した。いずれの評価認証型融資とも、非財務評価を融資条件に反映させる世界初の試みと言える。