年金資産運用・基礎の基礎 【オルタナティブ編 第6回】不動産とインフラストラクチャー〜インカム中心の戦略多く、投資のイメージも具体的
オルタナティブ運用のプライベート・アセット投資で、今回は不動産とインフラストラクチャーを採り上げます。日本の企業年金に投資規制が課せられていたころから、不動産投資は一定程度取り組まれていました。インフラストラクチャーも近年は多くの企業年金が投資しています。両者の特徴などについてラッセル・インベストメントの金武伸治さんに、分かりやすく説明していただきます。
鑑定や基準をもとに資産価値を評価
従来プライベート・アセット投資を敬遠していた企業年金が「ウチもそろそろ」といって、不動産やインフラストラクチャーへの投資を始めるケースが多いようですね。
金武 前回ご説明したプライベート・エクイティが、主に企業価値の向上に伴うキャピタル・ゲインを狙う戦略だったのに対して、不動産やインフラストラクチャー(以下、インフラ)は、相対的にインカムつまり一定期間ごとにある程度固定したリターンを受け取ることが期待される戦略であることが多いです。
インカムの享受は伝統的資産である債券にも期待できますが、近年、不動産やインフラへの投資が拡大しているのは
- 相対的に価格変動リスク(ボラティリティ)が小さい
- インカムの源泉が伝統的資産とは異なる
──などの理由が考えられます。
価格変動リスクが小さいのはプライベート・エクイティと同様に、日々の時価評価がないことが主な理由です。実際には、不動産やインフラの資産価値評価は鑑定や基準に基づいた手法などで定期的・客観的に算定されています。このため評価上の価格変動は小さく見えますが、本質的には価格変動を伴うリスク資産であることを認識しておく必要があります。
また、不動産の場合は賃貸料、インフラの場合は使用料といったように、伝統的資産のインカムと源泉が異なります。このため収益源泉の拡張効果や分散効果も期待できます。加えて、主に海外では賃貸料や使用料がインフレに連動する契約になっているケースが多くあります。こうしたインフレ・ヘッジの性質を持つことも、インフレに弱い債券に対してリスクを分散するメリットがあるわけです。
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