プライベートアセットのトリセツ 第2回 優良マネジャーの選定とビンテージ分散がカギ~プライベートアセット投資における留意点
伝統的資産にはないリターン特性や分散投資への貢献などの利点から、プライベートアセットへの注目度は高まる一途だ。ただし、同アセットクラスはその性格上、投資に特殊な知識を要したり、特別な注意が必要だったりする。連載「プライベートアセットのトリセツ」では、そんなプライベートアセットを使いこなすコツを、マーサージャパン 資産運用コンサルティング シニアコンサルタントの細谷弥穂氏の話を基に紹介していく。第2回では投資における留意点を取り上げよう。
伝統的資産とは異なる特徴を持つ
伝統的資産のパフォーマンスがふるわない中、魅力的なリターンやポートフォリオの分散効果、インフレ耐性に期待できるプライベートアセットは有望な投資先になりうる。
一方で、「プライベートアセットは伝統的資産とは異なる特徴を持つため、投資には留意が必要」とマーサージャパン 資産運用コンサルティング シニアコンサルタントの細谷弥穂氏は指摘する。
まず第1に意識すべきは、プライベートアセット投資を行う目的や期待することを明確にし、それに合った資産クラスを選ぶことだ。
図表1のように、一口にプライベートアセットと言っても幅広い資産クラスが存在する。
高いリターンを狙いたいならば、キャピタルゲインがリターンの源泉となるPE(プライベートエクイティ)が中心になる。反対に、安定的なインカムや分散効果を求めるなら、シニアプライベートデットやコア/コアプラスの不動産、コア/コアプラスのインフラストラクチャーが主体になってくるだろう。
資産クラスごとの特徴を押さえた上で、運用方針や目的に照らして適切な投資先を選びたい。
2つ目に優良マネジャーの選定が大切になる。プライベートアセットは運用するマネジャーによりファンドのパフォーマンスが大きく異なってくる。例えばPE投資では、マネジャーが投資先企業の経営に深く関与する「ハンズオン」で企業価値を高めていくため、マネジャーのスキルや知見が反映されやすいからだ。
図表2はビンテージ(ファンド組成年)別のリターンを示しているが、上位10%と下位10%のファンドのリターンは大きく乖離しているのが見て取れる。
よって、優良マネジャーを見極める目利き力が必要だ。さらに、「人気のあるファンドは新規の投資家を受け付けないケースも多い。いかにマネジャーと良い関係性を構築し、維持できるかもポイントになる」(細谷氏)。
プライベートアセットの中でも分散する
3つ目のポイントは分散投資だ。市場対抗性のあるプライベートアセットのポートフォリオには、①戦略・サブ戦略、②ビンテージ、③マネジャー、④セクター、⑤地域──など複数の観点から十分な分散が欠かせない。
とりわけビンテージの分散には注意を払いたい。PE投資の場合、ファンド設定後3~4年で投資が終了するため、ファンドのパフォーマンスはその時期の経済状況や市場環境が反映されやすい。結果的に、パフォーマンスはビンテージ年に大きく左右される傾向にある。
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