年金資産運用・基礎の基礎 【オルタナティブ編 第5回】プライベート・エクイティ、上場株と何が違う?〜価格変動小さい割に高リターン。運用評価むずかしい面も
オルタナティブ運用の主役となりつつあるプライベート・アセットへの投資。その中でも、不動産投資と並んで企業年金からの投資額が多く、歴史も長いのがプライベート・エクイティ(以下、PE)です。上場株式と違い証券取引所で売買されていないことによる各種のメリットが魅力になっているようですが、デメリットもあるようです。ラッセル・インベストメントの金武伸治さんに、PE投資の魅力と留意点について伺いたいと思います。
改めてになりますが、日本の企業年金がPE投資に注目した時期と理由について教えていただけますか。
金武 日本の企業年金がPE投資を本格的に始めたのは、2010年代に入ってからと考えられます。
2008年の世界金融危機いわゆるリーマンショックの後も、欧州債務危機や米国債ショック、さらにチャイナショック、原油ショックなど、度重なる株価ボラティリティ(変動)の高まりを経験しました。
そうした中で、証券取引所に上場されていないために日々の時価評価が行われず、相対的にボラティリティの低いPEが注目されるようになりました。
年金運用は長期運用が基本であるため、資金の高い流動性はさほど必要ではありません。むしろ、流動性が低いことで価格変動性を抑えられる。また、流動性リスクの対価である流動性リスクプレミアムを享受することで、より高いリターンが望める。この2点が当初の導入理由であったと考えられます。
経営への関与でリターン向上も
その後も、企業年金によるPE投資は拡大していますね。
金武 そうです。PEに投資する理由は近年、より洗練された内容になってきました。
- 収益源泉の多様さ
- 上場株式と投資時間軸が異なることによる分散効果
- 運用者の意見が企業経営に反映しやすいことで高いリターンが望める
こうしたことがPE投資拡大の理由となってきました。
まず、収益源泉の多様さ。
一般的に上場株式の場合は成熟企業が多い。これに対して、PEの場合は新興企業や成長企業も多いことから、相対的に成長要素が幅広く、強いことが挙げられます。つまり、上場株式に対する企業成長ステージの観点による分散効果です。
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