経済指標を読み解く 1~3月期は、新型コロナの影響で前年比が嵩上げされる最後の四半期に~全国百貨店売上高に見る
1月全国百貨店売上高・前年同月比は12月4%から15%程度に大きく上昇か
日本百貨店協会が発表した2022年12月の全国百貨店売上高は既存店ベース・前年同月比プラス4.0%と10カ月連続増加となった。新型コロナウイルスの感染・第8波の増加局面と重なったものの行動制限がなかったことから年末商戦は活況で、ラグジュアリーブランドや宝飾品などの高額商品が売れた。気温が低かったことでコートなどの防寒商材も好調だった。
また、全国旅行支援による人流の回復や、水際対策の緩和でインバウンドの需要が回復したこともプラスに働いた。訪日外国人客の免税売上高は前年同月比5.8倍の約214.5億円、購買客数は23.3倍の約19万人だった。
2023年2月下旬に公表される予定の同年1月の全国百貨店売上高の前年同月比は、2022年12月分のプラス4%から、プラス15%程度と2ケタの増加になろう。大手百貨店4社が2月1日に1月の既存店売上高・速報を発表したが、2022年12月に続き高額商品、防寒商材、インバウンドが好調だった。また、初売りが好調だったことに加え、コロナ変異株の流行で、まん延防止等重点措置が発令され外出が控えられた前年の反動が大幅な売り上げ回復に寄与した。
1月の前年同月比は三越伊勢丹HDがプラス20.9%、大丸松坂屋百貨店がプラス20.8%、高島屋がプラス16.3%、そごう・西武がプラス11.1%だった。4社の単純平均は、プラス17.3%で、12月のプラス6.1%から11.2ポイント伸び率が高まった(個別銘柄に言及しているが、当該銘柄を推奨するものではない)。
ただし、まだコロナ禍の影響があまりなかった2020年1月に比べると、三越伊勢丹HD以外はまだマイナス圏にある。
景気ウォッチャー調査・現状判断DIは、緊急事態宣言など発令月と非発令月で11ポイントの差
緊急事態宣言は、2021年では1月8日~3月21日、4月25日~6月20日、7月12日~9月30日の合計3度(対象地域は様々、2020年に1回)発令された。景気ウォッチャー調査の現状判断DI(ディフュージョン・インデックス)などは、発令の度に影響を受け変動が生じ、グラフにするとジグザグの推移となった。
また、まん延防止等重点措置は2021年4月5日~9月30日、2022年1月9日~3月21日の期間に発令された。景気ウォッチャー調査の現状判断DI (季節調整値)の2021年1月~2023年1月の25カ月間のデータ(2023年1月分発表時に季節調整替えが行われた)を見ると、緊急事態宣言または、まん延防止等重点措置が発令され行動制限がとられていた10カ月の平均は39.5、一方、発令されていなかった15カ月の平均は50.5と違いが明らかである。
「景気ウォッチャー調査」では「新型コロナウイルス」という言葉が2020年1月調査で初めて登場した。それ以降、新型コロナウイルスの感染拡大の影響が景況感の大きなマイナス材料となっていたが、最近ではプラス要因として働くようになった。ワクチン接種がそれなりに進み、新型コロナウイルスの感染が拡大している時期でも行動制限がとられなくなったからだ。
新型コロナウイルス関連現状判断DIを作成すると、2020年1年間の平均は30.2と景気判断の分岐点50を大きく下回る低水準だった。しかし、2021年1年間の平均44.1、さらに2022年1年間の平均は現状判断DIが49.2と50に接近した。
2023年1月は52.3で2022年9月から5カ月連続で50超となった。新型コロナウイルスが景況感の足を引っ張らなくなったことを示唆している。
景気ウォッチャー調査・現状判断DI前年同月差と百貨店売上高・前年同月比のグラフは類似
景気ウォッチャー調査・現状判断DI(季節調整値)の史上最大値は1年に1度の季節調整替えがあった2023年2月8日から2022年12月の58.3となった。第2位は同年11月の58.0である。それぞれ、57.5、56.8からの上方修正となった。それまでの史上最大値は2005年12月の57.7(季節調整替え後は57.8で第3位)であった。
景気ウォッチャー調査・現状判断DI(季節調整値)は2023年1月48.5で前月から0.2ポイントと僅かに低下したと報じられた。現状判断DI(季節調整値)の前年同月差を計算すると、2022年12月は2021年が史上最大の大きい数字だった反動もありマイナス9.6だったが、2023年1月はプラス10.6になった。まん延防止等重点措置発令月だった2022年1月が37.9と低い数字だったからだ。
景気ウォッチャー調査・現状判断DI(季節調整値)の前年同月差と百貨店売上高・前年同月比をグラフに描いてみると、同じような動きになる。2022年1月から直近までの、全国百貨店売上高も大手4社単純平均も、どちらも景気ウォッチャー調査・現状判断DI(季節調整値)の前年同月差との相関係数が0.75になる。
2022年2月の現状判断DIも37.4とまん延防止等重点措置の発令月なので低水準、反動で2月の現状判断DIの前年同月差は高めの数字が、さらに百貨店売上高も高めの数字が予測される。
新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5月に「5類」に引き下げられることから、もう緊急事態宣言などが発令されることはないだろう。そのため、四半期でみると、2023年1~3月期の百貨店売上高が新型コロナウイルスの反動で高めの前年比となる最後の時期となろう。