11月一致CIは前月差3カ月連続下降

宅森 昭吉
三井住友DSアセットマネジメント
理事 チーフエコノミスト
宅森 昭吉

2022年11月の景気動向指数・一致CI(コンポジット・インデックス)は2015年を100とした指数で99.1、前月差マイナス0.5の下降になった。

2022年8月の一致CIは101.3でコロナ禍前の2019年5月(102.0)以来の水準に戻ったが、そこをピークに3カ月連続下降となった。11月分では速報値からデータが利用可能な8系列で、耐久消費財出荷指数、有効求人倍率の2系列だけが前月差寄与度プラスで、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、輸出数量指数の6系列が前月差寄与度マイナスである。

なお、2022年11月では先行CIも前月差マイナス1.0の下降に転じた。2023年1月25日発表予定の11月分景気動向指数・改訂値では、一致CIに労働投入量指数が加わる。労働投入量指数は、雇用者数(非農林業)と総実労働時間指数(調査産業計)の2つの系列を掛け合わせて作られている。内訳をみると、雇用者数(非農林業)は労働力調査のデータで前月比マイナス0.4%の減少であることが判明している。

【図表】景気動向指数:先行CI・一致CI
景気動向指数:先行CI・一致CI
出所:内閣府

一方、毎月勤労統計・速報値の総実労働時間指数(調査産業計)は前月比プラス0.7%の増加である。したがって労働投入量指数は前月比若干の増加であろう。前月差寄与度は現状ではプラス0.04程度であろう。

なお、11月の一致CI改定値では毎月勤労統計は確報値が使われよう。また、商業動態統計関連データや生産指数関連データも確報値が使用されるが、速報値から大きく修正される可能性は小さいだろう。

11月一致CIでは3カ月後方移動平均が下方修正の条件満たさず

最近の一致CIを使った景気の基調判断をみると、2021年1月分で「上方への局面変化」に上方修正され、2月分では判断が据え置かれた。3月分で景気拡張の可能性が高いことを示す「改善」に上方修正され、4月~8月分と「改善」の判断は据え置きになっていたが、9月分では景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高い「足踏みを示している」に下方修正され、10月分~2022年2月分速報値では「足踏みを示している」の判断が継続となった。

しかし、生産・出荷関連データの年間補正などがあった2月分改定値では「改善」に戻るための、「3カ月以上連続して、3カ月後方移動平均が上昇、かつ当月の前月差の符号がプラス」という条件を満たした。3月~10月分でも「改善」の判断が継続となった。

11月分でも景気の基調判断は10カ月連続して、景気拡張の可能性が高いことを示す「改善」になった。前月差は3カ月連続下降、3カ月後方移動平均の前月差は2カ月連続下降と厳しい内容になったが、3カ月後方移動平均の前月差の2カ月累計がマイナス0.80で1標準偏差のマイナス1.00に届かなかったため、「足踏み」に下方修正されるための「3カ月後方移動平均の符号がマイナスに変化し、マイナス幅(1カ月、2カ月または3カ月の累積)が1標準偏差以上、かつ当月の前月差の符号がマイナス」という条件は満たさなかった。

12月分で「改善」の判断が継続となるためには、一致CIの前月差が上昇することが必要だ。前月差がマイナス0.1ポイントでも下降になれば、「足踏み」に下方修正される。3カ月後方移動平均の前月差の2カ月累計のマイナス幅がマイナス1.3程度と1標準偏差(マイナス1.00)以上になるからだ。

一致CIの第1系列・生産指数は12月低下の可能性

一致CIの第1系列は、生産指数である。12月の一致CIを占う上で、鉱工業生産指数がどうなりそうかをみてみよう。鉱工業生産指数の先行きを製造工業予測指数でみると12月は前月比プラス2.8%上昇の見込みである。

しかし、過去のパターン等で製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、12月の前月比は先行き試算値最頻値でマイナス1.3%の低下になる見込みである。90%の確率に収まる範囲はマイナス3.6%~プラス1.0%になっていて、上昇・下降どちらの可能性もありそうだが、低下の可能性の方が大きそうだ。

また、生産指数との2016年1月以降の相関係数が0.81と高い、景気ウォッチャー調査・製造業・現状水準判断DI(季節調整値)は8月45.3、9月44.5、10月45.3、11月45.1、12月43.7と推移している。このデータからみると、12月の生産の前月比は低下の可能性が大きそうだ。日銀「実質利上げ」報道や政府の増税方針が、12月の生産活動に冷水を浴びせた可能性もありそうだ。

一致CIには生産指数の他に出荷関連の指標が多く採用されていて、2023年1月31日の生産指標の発表からは目が離せない。2022年12月の一致CIの前月差が低下し、景気の基調判断が「下げ止まり」にいったん下方修正されると、「改善」に戻るためには、「3カ月以上連続して、3カ月後方移動平均が上昇」という条件があるため、短くても春いっぱいは「足踏み」のシグナルの下で経済活動をしなければならなくなり、マインド面での不安材料になってしまいそうだ。