コロナの影響示唆するノミネート語

宅森 昭吉
三井住友DSアセットマネジメント
理事 チーフエコノミスト
宅森 昭吉

ユーキャン・新語・流行語大賞のノミネート語30をみると、新型コロナウイルスの世の中に及ぼす影響の大きさの変化がみてとれる。

2020年の「新型コロナウイルス」関連語は、年間大賞に選ばれた「3密」をはじめとして、「新しい生活様式/ニューノーマル」、「アベノマスク」、「アマビエ」、「エッセンシャルワーカー」、「おうち時間/ステイホーム」、「オンライン○○」、「クラスター」、「GoToキャンペーン」、「自粛警察」、「Zoom映え」、「ソーシャルディスタンス」、「テレワーク/ワーケーション」、「濃厚接触者」、「PCR検査」と全体の50%に当たる15語であった。

さらに、ステイホームが増えて利用が増えた「ウーバーイーツ」や、人との接触を避けることができる「ソロキャンプ」をも「新型コロナウイルス」関連語に加えると57%に当たる17語と過半数だった。

2021年は「新型コロナウイルス」と「東京オリンピック・パラリンピック」が大きな話題になった。30のノミネート語をみると、「新型コロナウイルス」関連語では「自宅療養」「人流」「副反応」「変異株」「黙食/マスク会食」「路上飲み」の6語が選ばれ、全体の20%に当たる。

2021年では、「東京オリンピック・パラリンピック」関連語が9語で全体の30%と「新型コロナウイルス」関連語を上回った。なお、年間大賞には、「リアル二刀流/ショータイム」が選ばれた。

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2022年のノミネートで「新型コロナウイルス」関連語は「オミクロン株」「顔パンツ」の2語にとどまった。一番多かったのは野球関連で、「大谷ルール」、「きつねダンス」、高校野球優勝監督の「青春って、すごく密なので」、「BIGBOSS」、「村神様」、佐々木朗希投手を称した「令和の怪物」の6語である。人気のスポーツ関連語が一番多いことから、日常が戻ってきた感じがする。

コロナは景況感にプラス。景気W調査

「景気ウォッチャー調査」は「とらえどころのない世間の景気実感」を適格に把える調査である。調査時点が前月25日から月末で、結果発表が原則翌月の第6営業日という速報性に優れた景気指標だ。2022年11月9日に10月の結果が発表された。

「景気ウォッチャー調査」のDI(ディフュージョン・インデックス:現状判断と先行き判断がある)は「良」から「悪」までの5段階の回答を1~0まで0.25刻みで点数化し、回答数で加重平均するシンプルなものだ。注目される事象に関するコメントから算出する関連DIを誰でも簡単に作ることが出来る。

なお、内閣府の公表資料には、わかりやすいように「良くなっている:◎」「やや良くなっている:○」「変わらない:□」「やや悪くなっている:▲」「悪くなっている:×」の記号が使用されている。

【図表】景気ウォッチャー調査の主な要因別関連DI(2022年9月)
キーワード   コメント数 関連DI 全体DIとの差
為替 現状判断DI 68 41.2 ▲8.4
先行き判断DI 180 42.5 ▲6.8
ウクライナ 現状判断DI 12 31.3 ▲18.3
先行き判断DI 46 42.4 ▲6.9
ロシア 現状判断DI 3 25.0 ▲24.6
先行き判断DI 17 38.2 ▲11.1
価格 or 物価 現状判断DI 209 39.4 ▲10.2
先行き判断DI 349 37.0 ▲12.3
新型コロナウイルス 現状判断DI 331 55.7 +6.1
先行き判断DI 339 59.2 +9.9
外国人 or インバウンド 現状判断DI 15 70.0 +20.4
先行き判断DI 86 70.1 +20.8
第7波 現状判断DI 33 59.1 +9.5
先行き判断DI 22 63.6 +14.3
全国旅行支援 現状判断DI 14 66.1 +16.5
先行き判断DI 137 75.2 +25.9

出所:内閣府データより作成

【図表】景気ウォッチャー調査の主な要因別関連DI(2022年10月)
キーワード コメント数 関連DI 全体DIとの差
為替 現状判断DI 109 40.1 ▲11.0
先行き判断DI 249 41.5 ▲6.7
ウクライナ 現状判断DI 21 38.1 ▲13.0
先行き判断DI 33 40.2 ▲8.0
ロシア 現状判断DI 5 40.0 ▲11.1
先行き判断DI 11 31.8 ▲16.4
価格 or 物価 現状判断DI 263 40.5 ▲10.6
先行き判断DI 391 38.9 ▲9.3
新型コロナウイルス 現状判断DI 242 60.4 +9.3
先行き判断DI 307 53.9 +5.7
外国人 or インバウンド 現状判断DI 44 71.0 +16.5
先行き判断DI 89 63.5 +25.9
第8波 現状判断DI 6 70.8 +19.7
先行き判断DI 52 47.1 ▲1.1
全国旅行支援 現状判断DI 153 71.7 +20.6
先行き判断DI 140 56.1 +7.9

出所:内閣府データより作成

2022年10月「景気ウォッチャー調査」の現状判断DI(季節調整値)は前月差1.5ポイント上昇し49.9になったが、景気判断の分岐点50には僅かに届かなかった。新型コロナウイルスの影響を大きく受ける飲食関連現状判断DIは、6月62.0から第7波が生じた7月は31.2ポイントも大幅悪化し30.8に、8月37.1の30台の厳しい数字になった。しかし、9月56.7、10月61.0に大幅改善した。サービス関連現状判断DIも同様の動きで、7月の44.3から10月は56.8と景気判断の分岐点の50超になった。

「景気ウォッチャー調査」全体に対する内閣府の基調判断は5月・6月の「緩やかに持ち直している」から、7月は「持ち直しに足踏みがみられる」に下方修正され8月も同じ表現だった。しかし、9月で「持ち直しの動きがみられる」に上方修正され、10月も判断継続になった。

2020年1月から盛り込まれてきた新型コロナウイルスに関する文言は2022年5月に消えた。ワクチン接種の効果などで新型コロナウイルスの経済への影響が比較的小さくなり、社会経済活動が正常化に向かいつつあることが背景にあろう。

「新型コロナウイルス」関連現状判断DIをつくると、8月43.2、9月55.7、10月60.4と影響が消えつつあり、景況感にプラスに働いていることがわかる。一方、2020年3月に1085人がコメントし、16.3と極めて悪かった新型コロナウイルス関連先行き判断DIもだいぶ改善した。2022年で一番悪い数字は7月42.5。

そこから、第7波が落ち着くとの判断から8月51.3、9月59.2と改善した。但し10月は50超だが53.9に鈍化した、コメントしたのは307人にとどまった。10月の先行き判断で「第8波」に触れた景気ウォッチャーは52名、第8波関連先行き判断DIは47.1と僅かだが50割れとなった。「第8波」への懸念が出てきたことが分かる。

影響が大きい「全国旅行支援」の効果

物価高による悪影響や米国景気など海外景気の悪影響など、相変わらず懸念材料は多い。10月「価格or物価」関連現状判断DIは40.5、先行き判断DIは38.9と比較的厳しい数字である。一方、2022年10月11日から始まった全国旅行支援はいろいろと制度設計上の問題があるようだが、10月「全国旅行支援」関連現状判断DIは71.7と全ての人が「やや良くなった」と回答した時の75.0に迫る高水準で、大きな効果が感じられる。但し、現在のところ12月が期限なので、終了した時の反動を気にするコメントも多く、10月「全国旅行支援」関連先行き判断DIは50超だが、56.1と50台になっている。

10月景気ウォッチャー調査に関しては、「10月の街角景気、3カ月連続改善=先行きは物価高響き悪化」などの報道が多かったが、飲食関連とサービス関連が現状で改善、先行きで悪化となった影響が大きいことから全国旅行支援の効果と反動の影響もありそうだ。「全国旅行支援」関連の現状判断DIと先行き判断DIの差からも裏付けられよう。