米株を押し上げた発射台効果

井出 真吾
ニッセイ基礎研究所
上席研究員 チーフ株式ストラテジスト
井出 真吾

2022年の株式市場は世界的なインフレ長期化の影響を大きく受けた。FRB(米連邦準備理事会)は景気や雇用を犠牲にしてもインフレ退治を優先する姿勢を貫き、2022年6月~11月のFOMC(連邦公開市場委員会)において4回連続で0.75%ずつの利上げという前代未聞の措置に踏み切った。

この結果、2021年末に0.25%だった米政策金利(上限値)は2022年12月末の4.5%まで急上昇、これを嫌気した米株価指数(NYダウ、S&P500、NASDAQ)はいずれも同年9月下旬~10月中旬に2022年の最安値をつけた。

長く続いた市場の悲観ムードが一変したのは同年11月10日だった。10月の米CPI(消費者物価指数)上昇率が事前の市場予想(前年同月比7.9%上昇)を下回る7.7%の伸びにとどまると、市場では一気に安心感が広がり、NYダウは前日比1200ドル超の上昇でこの日の取引を終えた。

実は、このインフレ率鈍化はある程度予想できた。米CPIの推移を見ると(図表)、2021年7~9月と比べて同年10月は大きく上昇した。つまり2022年10月の「前年同月比」を計算する「分母」が大きくなり、CPI 上昇率が鈍化しやすかったわけだ(いわゆる発射台効果)。

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