マクロ経済 コロナ禍の7~9月期もプラス成長を維持
成長鈍化も底堅さを維持
2022年11月15日に公表される2022年7~9月期の実質成長率は、前期比年率でプラス0.9%と予測している。4~6月期の年率3.5%成長からは減速するものの、4四半期連続のプラス成長となる見通しである。
成長ペースが鈍化する要因は、新型コロナウイルスの感染再拡大と物価上昇で、サービス関連を中心に個人消費の回復にブレーキがかかったとみられる。
外需の悪化も成長ペースの鈍化を見込む要因である。輸出から輸入を差し引いた純輸出の年率寄与度は4~6月期のプラス0.2%ポイントから7~9月期にはマイナス1.2%ポイントへ悪化する見込みである。
ただし、外需による下押し圧力は、輸出の下振れではなく、輸入の大幅増に起因する。2022年3月末からの上海ロックダウン(都市封鎖)で中国からの出荷が一時的に止まり、その影響で4~6月期の日本の輸入は停滞したが、7~9月期にはその反動で輸入が大幅に増加したとみられる。
中国当局の活動制限に伴う輸出入のタイミングが影響している側面があり、外需寄与度の悪化が示唆するほど貿易環境が悪化したわけではないと考えている。
緩やかながらも回復を続ける個人消費
夏場の個人消費は伸び悩んだものの、過去の感染拡大局面に比べると悪影響は限定的だった。ワクチン接種が進展したことに加え、感染対策に関する経験値が蓄積されてきたことで感染に対する警戒感が和らいでいるためだ。
内閣府の人流データによると、感染が拡大した2022年8~9月は、2019年同週比でマイナス幅が拡大したものの、オミクロン型の感染が拡大した2022年1~2月に比べるとマイナス幅は小幅だった(図表)。
感染が沈静化した9月後半以降、人口移動は回復に向かっており、外食やレジャーなどのサービス消費も持ち直しているとみられる。
2022年10月11日からは「全国旅行支援」も開始されており、人口移動の活発化とともにサービス消費は回復の動きを取り戻そう。感染再拡大のリスクは払拭できないが、宿泊旅行や外食を中心とした個人消費の回復で10~12月期の成長ペースは再び加速すると予想している。
コロナ禍前を取り戻そうとする家計行動が日本経済を下支え
世界経済の減速懸念が強まる一方、日本経済は回復基調を維持すると予測しているが、この背景にあるのは日本経済の回復の遅れだ。コロナ禍前の活動水準を取り戻した欧米経済に対し、コロナ禍前の経済活動を取り戻し切れていない日本経済には回復の余地が残されている。日常を取り戻そうとする家計行動や企業活動が維持されることが景気回復の原動力となろう。
コロナ禍前の活動水準を取り戻した欧米経済は金融引き締めの影響などもあって、2023年にかけて下向きの圧力が強まるとみられるが、日本経済は緩やかながらも上向きの動きを維持すると予想している。