近年、ESG(環境・社会・企業統治)を考慮した投資が急速に発展、普及してきましたが、足元では2021年に開催されたCOP26(第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議)での議論などを受け、資産運用の世界でもパリ協定の目標を意識した取り組みが進んでいます。本連載ではESG投資の中で現在、最も注目を集めている分野の一つである脱炭素投資を巡る様々な議論を紹介、解説していきます。第2回は、脱炭素投資を考える上で最も重要な指標となる温室効果ガス(GHG)排出量に関する論点を確認したいと思います。
3つの排出スコープ
気候変動に対応した投資を検討する上でGHG排出量は最も重要な投資指標の一つですが、一般にGHG排出量は図表1のように、燃料の燃焼などによる直接排出であるスコープ1、電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出であるスコープ2、それ以外のスコープ3に分類され、スコープ3はサプライチェーンの上流(アップストリーム)と下流(ダウンストリーム)に分けられます。
【図表1】サプライチェーン排出量の分類
スコープ3の重要性と難しさ
英CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)の推定(※1)によると、スコープ3は企業の排出量の75%程度を占める一方で、データ収集の難しさなどから開示している企業は限定的です。MSCI社の報告(※2)によると2022年2月時点で、同社のグローバルな投資ユニバース(MSCI ACWI Investable Market Index)の構成銘柄のうちスコープ3を開示しているのは全体の25%未満に留まっており、大半が推定値に依存しています。
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