ポストインフレ期の米国経済と終わらないドル高 米国の景気後退は国際収支危機の引き金。ドル円相場の反転は未だ見通せず
世界的なドル高トレンドの背景となった米国の景気拡大とインフレ懸念がもたらす米長短金利の上昇と貿易収支の悪化に、変調の兆しが見えてきた。短期的なドル高要因は終息の途上にあると言えるが、様々な指標が示唆するのは、米国の景気後退が世界的なドル供給の不足を生み、それが中長期的なドル高トレンドを継続させる可能性だ。(記事内容は2022年8月31日時点)
足元のドル高局面には貿易赤字拡大と金利上昇が同伴
今般のドル高局面は、2021年初頭に始まった。その主因は、新型コロナウイルス禍によって2020年3月以降大きく悪化した米国経済の急回復とサプライチェーンの機能不全によるインフレ懸念であった。したがって、今回のドル高は、米国長短金利の上昇と同時に進行したことがまず特徴として挙げられる。
米国の長期金利(10年物国債利回り)は、景気悪化を受けて2020年8月に0.55%まで低下した。しかし、同年9月には景気回復とインフレ懸念を先取りするかたちで上昇に転じ、2021年4月には1.72%まで達した。また、コロナ禍の発生を受けて2020年3月に0%台まで低下したFF(フェデラルファンド)レートは、2021年3月以降上昇に転じ、2022年8月には2.33%に達している。長期金利も、同年6月には3.17%まで上昇した。
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