クォンツ運用をおもふ【第2回】 接近し合うクォンツ運用とジャッジメンタル運用の整理と融合―コラッツを目指して―
<連載第1回記事はコチラ!>
【第1回】データだけではなく、マーケットドリブンのルール作りを
急接近
第2回は標題の観点からクォンツ運用をおもふ。私の知る限り本邦金融機関では、クォンツ運用とジャッジメンタル運用は長きにわたり、真にシナジー効果を十二分に与え合う形で発展しておらず、にらみ合いの状態が続いてきた。にらみ合いが続いてきた主な原因は、お互いの言語が十分に理解できず、お互いの気持ちが十分に分かり合えてこなかったからであると私は思っている。それでも、理解し合おうと努めてきたのも事実であろう。
ところで、これまで一部の分野を除き、クォンツ運用はジャッジメンタル運用に比べて様々な理由で表舞台に立つ機会は少なかったように思う。しかし、ビッグデータや人工知能・機械学習という言葉にスポットライトが当たりDX(デジタルトランスフォーメーション)が進むいま、クォンツ運用に対する需要は高まり、表舞台に立つ機会も増えてきた。
加えて、フィデューシャリーデューティー(受託者責任)を背景に、運用者は透明性の高い説明責任を求められるようになったことから、ジャッジメンタル運用といえども、クォンツ運用のエッセンスを一部取り入れる流れが進んでいるように感じている。この潮流は、クォンツ運用とジャッジメンタル運用のにらみ合いが終焉に近づき、両者が急速に接近し合っていることにほかならない。
両者の接近、ひいては融合は、今後の日本の金融がより強くなる上で必要不可欠であり、DXに向かう中での「意図せざる良き副産物」であると言えよう。第1回で紹介した、①4象限を取り決めた上で(ジャッジメンタル視点)、②各象限でルールを取り決める(クォンツ視点)といった2段階アプローチも、両者の融合が生み出すアウトプットの形の一つである。接近・融合がスムーズにいっている組織もあれば、そうでない組織もあろう。
そこで本稿はクォンツ運用とジャッジメンタル運用を整理することで、お互いの気持ちをより深く知るきっかけを作ることを目標とし、両者の接近・融合が円滑に加速することを願う。また、第1回の補遺「②ルール作りにフォワードルッキング要素がないため、未曾有の事態に対応できない、といった誤解」についても触れる。
整理
クォンツ運用とジャッジメンタル運用、いずれの運用手法も経験した私なりの整理が【図表1】である。
【図表1】から分かるように、クォンツ運用とジャッジメンタル運用は似通った部分もあるものの、決定的に異なるのは投資判断あるいはルール作りの上に「相場テーマがあるか無いか」である。
この記事は会員限定です。
会員登録後、ログインすると続きをご覧いただけます。新規会員登録は画面下の登録フォームに必要事項をご記入のうえ、登録してください。