イタリアの投資価値を考える
イタリアは定期的に、そして、まるで儀式のように、決まって信用リスクが高まることがある。ただし、イタリアはEU(欧州連合)に加盟している以上、一定のサポートを受け、そのためワイド化したクレジットスプレッドが投資機会になりうる。今般、イタリアはまたも格下げ圧力を受けており、信用リスクが高まる局面にある。なぜイタリアの信用リスクが高まってきたのかを見極め、投資価値を判断したい。
格下げ圧力
2022年8月5日、ムーディーズがイタリアの格付をBaa3に据え置きながら、その見通しを安定的からネガティブに変更した。経済成長や財政動向がそれなりに安定してきた一方で、ロシアによるウクライナ侵攻の影響と政治的混乱の懸念が背景にある。
ムーディーズによると、この背景から、①政治環境がイタリアのNRRP(国家復興回復計画)を含む構造改革の実施を妨げるリスクの高まり、②エネルギー供給の課題が経済見通しを弱めるリスクの増大(ロシア依存度がドイツに次いで高いため)、③成長の鈍化、資金調達コストの上昇が財政規律の後退に繋がればイタリアの信用力を弱めることに繋がるという。
総選挙は中道右派が優勢
2022年9月25日に総選挙が行われる。現在の選挙法は選挙協力に関する合意や政党連合の結成を進めようとする各政党の動きを後押しするものになっている。
(1)現在の支持率
現在の議会において、絶対的過半数を有する勢力はない。その結果、連立政権が長く続いている。
現在の世論調査によるとFI(フォルツァ・イタリア)、FdI(イタリアの同胞)、同盟で構成される中道右派連合が優勢であることを示す(図表1)。中道右派連合は議会で絶対的過半数を確保し、連立政権を樹立することが可能。FdIは最多議席を獲得する勢いであると見られ(図表2)、そうなると次期首相候補はFdIから選ばれる可能性が高く、現在の党首であるジョルジャ・メローニ氏が首相候補となる。
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