1990年代初めのバブル崩壊のトラウマでアレルギーすらあった「不動産」に対し、機関投資家の見る目が変わってきた。不動産投資マーケットの現状について関係者に話を聞いた。(工藤晋也)

キャピタル狙いからインカム期待へ、投資期間も長くなる

歴史的な低金利を受けて、債券や株式に代わるオルタナティブ資産の存在感が高まっている。オルタナティブ資産といえば、ヘッジファンドなどが挙げられるが、三井住友トラスト基礎研究所が機関投資家に実施したアンケート調査で一番人気だったのが「不動産」だ。投資理由は、「安定的なインカムゲイン(分配金)の確保」が最も多く、「分散投資効果」、「リターンの向上」と続く。

「かつての機関投資家はキャピタルゲイン目的で不動産に投資していたが、昨今は3~4%程度のインカムが期待できる安定的なアセットクラスと目されている」と、PGIMリアルエステート・ジャパンマーケティング・グループ エグゼクティブ・ダイレクターの有村政基氏は話す。

インカム狙いの運用スタンスに変わったことから、「以前より投資期間は長くなった。リーマン・ショックを経てレバレッジ水準も低下傾向にある。アンケート調査でもレバレッジ水準は『30%以上~40%未満』が回答のボリュームゾーンになっている」と三井住友トラスト基礎研究所の私募投資顧問部副部長 主任研究員の前田清能氏は語る。

とはいえ、米国などのように債券や株式に次ぐ第3のアセットクラスまでには至っていないようだ。「海外機関投資家の多くは、不動産を単独のアセットクラスと見ているが、日本ではオルタナティブ資産の一つに過ぎない」と有村氏は明かす。

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