歴史的な低金利が続くなか、金利反転の兆しが見え始めている。国内債券に代わる代替投資先を模索する機関投資家の運用課題などについて、資産運用会社のトップが語り合った。(取材日:2017年10月4日)

座談会
〈左から〉
■出席者
コムジェスト・アセットマネジメント 代表取締役 高橋 庸介
アセットマネジメントOne 取締役社長 西 惠正
三井住友アセットマネジメント 代表取締役社長 兼 CEO 松下 隆史
ベアリングス・ジャパン 代表取締役社長 和田 浩己
■モデレーター
マーサー ジャパン 資産運用コンサルティング部門代表 取締役 大塚 修生

地政学リスクの影響を再考、新興国の資金動向変化にも注目

大塚 企業年金や公的年金、金融法人の現在の運用環境をどう見ているか。

西 現在は、歴史的な低金利によって債券の投資魅力が薄まっているものの、株式市場は世界的に上昇基調にある。ボラティリティも低下しており、はた目には“ゴルディロックス”の状況下といえる。しかし、金利反転の可能性など、トレンド転換を促すマグマが吹き出しそうな気配があり、あまり居心地のよくない適温相場状態といった方がよい。

松下 低金利環境のなか、“通常”と異なる考え方で物事を捉え直す必要が出てきた。米国の金利動向は必ずしも物価の動きと一致しているといえない部分があり、地政学リスクが市場ボラティリティに与える影響についても今一度考えることは大事である。そのような環境でアジア・オセアニアを含む新興国に対する資金動向がどう変化しているかにも注目する意義がある。

高橋 構造的かつ本質的な問題という意味では低金利が一番重要だ。機関投資家は徐々に伝統的な債券運用からオルタナティブ資産に資金をシフトしているが、そのスピードは遅い。トレンド転換の懸念から低金利による運用難を甘受しているのではないか。

和田 機関投資家は、かつてのような「フリーランチ」を楽しめなくなった。その一方で、流動性をある程度犠牲にすることで、リターンが高くボラティリティの低い運用戦略など、個々のリスク・リターンプロファイルに適した投資先を選べるようになった。ただし、選択肢が広がった分、今度は自分たちに適したリスク・リターンプロファイルを理解してくれるパートナーをいかに見つけるかが肝要となっている。

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