水や空気、ガス、石油などの流体をコントロールする「バルブ」を製造・販売するキッツグループは、2016年から統合報告書「コーポレートレポート」を発行している。統合報告書制作のきっかけや効果などについて、経営企画本部 広報・IR室の3名に聞いた。

機関投資家の中長期の投資判断に有用なツール

キッツキッツの企業PRツールは、「会社案内」「コーポレートプロフィール」と段階を踏み、今の統合報告書「コーポレートレポート」に至る。2004年から2012年までの会社案内ではキッツ単体のみを紹介していたが、企業買収などグループの事業領域拡大に伴い、グループ全体を把握できるコミュニケーションツールとして、2013年にコーポレートプロフィールを発行した。

経営企画本部 広報・IR室長の向井真也氏は、「グループ会社を含むタスクフォースチームを編成し、約20名で会社の目指すべきストーリーを検討した」と当時を振り返る。

続いて、2015年のコーポレートガバナンス・コードの施行や、2016年度から開始した同社の第3期中期経営計画をきっかけに、2016年にコーポレートプロフィールをステップアップした統合報告書の制作に着手。キッツグループの価値創造プロセス、中長期にわたる持続的な成長ストーリーを加えたほか、財務情報を充実させ、機関投資家や証券アナリストの中長期の投資判断に有用なツールが誕生した。

統合報告書の目的について、同室副主事 山下理起夫氏は「当社の主力製品であるバルブに縁が薄い方にも、水やエネルギーなどを通して一般の生活にキッツグループの製品が広く根付いていることを知ってもらうこと」と強調する。

統合報告書には、同社の製品が社会に貢献している仕組みを視覚化したイラストを多数掲載した。社内からも分かりやすいと好評で、展示会などのイベントでも活用して認知度アップに役立てているという。

統合報告書

ステークホルダーの意見を経営効率の改善に生かす

同室 主任 石井文子氏は、「当社の強みの一つはバルブの一貫生産。開発・製造・販売の順に見開き2ページで展開し、流れを追って理解できるようにした。コーポレートガバナンスの取り組みでは、社外取締役が増えて実効性が高まっている様子などを年表風にまとめた」と説明する。すべての経営陣の経歴と顔写真を掲載した点は、投資家から反響を呼んだ。

山下氏は、「統合報告書を初めて制作した2016年版は時間を確保しきれず既存データを集めて制作した部分もあったが、2017年版は早い段階から着手したことと、社内だけでなく学生など多方面から集まった意見も参考にし、内容を大幅に改善できた」と打ち明ける。

石井氏は、「2016年版は女性社員の掲載写真が少なく、『女性の活躍する姿がイメージしにくい』と指摘を受けたので、2017年版は女性を多く登場させた。非財務分野の『人財』も重視。2017年版では、社員の紹介人数を2倍にした」と語る。

同社は、統合報告書を客先訪問時や新卒採用にも活用している。各種情報が網羅されており、1冊で理解を促進することができるため、さまざまなステークホルダーに対する企業PRツールとしても積極的に活用することが可能だからだ。向井氏は、「これまで以上にステークホルダーとの直接の対話機会を設け、参考意見や情報を確実に経営陣へフィードバックし、経営効率の改善や透明性向上につなげていきたい」と締めくくった。