豊富な研究資金を確保する海外大学との競争や少子化にともなう財源確保のため、大学の資産運用の重要性が叫ばれている。その裏には既に、寄付金を主な財源とした「エンダウメント(基金)」という独自の運用体制の下、少しでも高い利回りを追求しようと努力する担当者の姿がある。大学基金の運用担当者や有識者の声を通じ、教育法人の資産運用戦略と今後の展望について概観する連載「大学基金の資産運用」第2弾。第2回では立命館大学財務部長の酒井克也氏に、事務職員が運用する同大学の工夫について聞いた。
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北里大学:リスク予算の配分を核とする新たな機関投資家の運用を志向
ペイオフ解禁で銀行預金100%に危機感
立命館では、2005年に資産運用を始めた。それ以前は資金の100%を銀行預金としていたが、2000年代前半に金融機関のペイオフ(預金全額保護の特例)が全面解禁されたことで銀行に資金を集めておけば絶対に安心という神話が崩れ去ったことが転機となった。立命館の財務部長である酒井克也氏は、「学校法人は建物の新築・改修を含めた設備投資のために、多額の資金をストックする性質がある。万が一の場合に備えるために運用を開始する必要に迫られた」と回想する。
元本棄損リスクの低い国債への投資から始まり、2009年には外国債券、2013年にはオルタナティブ資産への投資を開始した。機関投資家が積極運用に移行する際には、伝統的資産に投資を行うケースがほとんどだが、同大学においては、株式ではなくオルタナティブ資産への投資を選択した。
酒井氏はその理由について、「大学資金の特性上、設備投資コストの用意は長期的な目線で考える必要がある。その視点で見れば、短期で株式の売買を行うよりもオルタナティブ資産、例えば不動産などに投資を行い、長期で着実にインカムリターンをとる方針のほうが適していると考えたからだ」と説明する。
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