豊富な研究資金を確保する海外大学との競争や少子化に伴う財源確保のため、大学の資産運用の重要性が叫ばれている。その裏では既に、寄付金を主な財源とした「エンダウメント(基金)」という独自の運用体制の下、少しでも高い利回りを追求しようと努力する担当者の姿がある。大学基金の運用担当者や有識者の声を通じ、教育法人の資産運用戦略と今後の展望について概観する連載「大学基金の運用戦略」。第3回では国際基督教大学で大学基金の運用を担当する新井亮一理事に、同大学独自の工夫が凝らされた運用方針について聞いた。
「時価の回復に必要な期間」を投資商品ごとに推計
戦後の日米の募金活動により設立された国際基督教大学(以下、ICU)は、約500億円の運用資産を持つ。近年その運用では、債券などいわゆる低リスク・低リターンのアセットクラスを排除し、オルタナティブ資産の比率を積極的に上げる動きが続いている。
一般的に大学基金はリスクを抑えた運用をするイメージが強いが、そのイメージとは対照的なICU基金の積極的な運用姿勢の背景には、他校と異なる財政運営方針がある。1953年の献学から、対話重視の質の高い少人数教育を堅持してきたICUでは、授業料や補助金だけでは賄いきれない教育経費を、自前財源である寄付金や基金の運用益で埋めてきた。
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